2話 セーブ&ロードで美少女を助けました

 俺は追放処分を受けて【デビルメイデン】から追放された。


 行き場を失った俺はぶらぶらと町を彷徨い歩いていた。


 何せ行く当てがないからな。



 「ソロ冒険者として頑張るか……」



 そんな妥協した決意で町を歩いていると、背後から何者かにぶつかられた。


 俺は顔面から地面に仰向けに転んだ。



 「いてて」

 「ご、ごめんね。ちょっと追われてて」

 「ああ大丈夫。それより追われてるって?」

 「それがね――」



 ぶつかってきた黒いコートを身に纏い腰に安そうな剣を帯同している紫色の髪の美少女が俺に事情を説明しようとしたその時、背後から怒声が聞こえた。



 「待ちやがれこの女が」

 「やばっ。もう追ってきてる」

 


 追ってきているのはいかつい顔で筋骨隆々のガラの悪い男だ。


 そして俺は何故か紫色の髪の美少女に手を引かれて一緒に全力で逃げる。


 何故俺が!?



 「この男もお前の仲間か。殺してやる」

 「いや違っ――」

 「ぜってえ殺す。俺の顔に泥を塗りやがって」



 話を聞いてくれ。


 俺は関係ない。


 追放処分を受けた俺に追い打ちをかけるような真似はやめてくれ。



 「はあはあ……はあはあ」

 「ごめんね。何か巻き込んじゃって」

 「いやいいけど。何しでかしたんだ?」

 「幼い子供からお金奪おうとしてたから間に入って止めたんだけど、思ったより強いししつこくてさ」

 「事情は分かった。多分逃げ切れないから俺がサポートするよ。一緒に戦ってくれる?」

 「え!? 私そんなに強くないよ」

 「大丈夫。俺の魔法は何回でもやり直せるから」

 「え!?」



 バレッドは無限に出来るわけじゃないと俺を罵った。


 だが無限に近い回数セーブ&ロードは出来る。


 俺の魔力量は人より格段に多いから。


 まあ戦闘タイプではないからソロではきついけど。



 「見つけたぞ女。お前はたっぷりと犯してから嬲り殺してやる」

 「最低だなお前。事情を聞いた限りお前が悪いだろうが」

 「黙れゴミくずが。この世は弱肉強食なんだよ」

 「なら俺達が強者でお前が弱者だ」

 「失せろガキが」



 俺に向かって素手で殴りかかってくる。


 速いが避けられるレベルだ。


 

 「セーブ」

 「は!? 何を言ってやがる」

 「万が一の為だ」



 俺はいかつい男から距離を取り、紫色の髪の美少女に合図した。



 「思う存分戦え。俺を信じろ」

 「何かよく分からないけど信頼する。行くよ」

 


 紫色の髪の美少女が腰に帯同していた剣でいかつい男に切りかかる。


 だが簡単に避けられる。


 どうやらあまり強い冒険者ではないらしい。



 「甘いんだよ」

 「きゃっ」

 「捕まえた」



 いかつい男が紫色の髪の美少女の腕を捕まえる。


 俺はその瞬間ある言葉を口に出す。



 「ロード」

 「え!?」



 俺が「ロード」と唱えると先ほどセーブした場面へと戻る。


 つまりやり直した訳だ。



 「こ、これって一体何が起きてるの!?」

 「説明は後。取り敢えず先ほどの攻撃は効かないから別な攻撃で戦え」

 「わ、分かった」



 大丈夫だやり直せるぞ。


 そんなメッセージを込めて彼女の背中を押した。



 「はあああっ」

 「何!?」

 


 先ほどとは全く違う攻撃方法で彼女は戦う。


 俺が囮となって攻撃をするといかつい男はその囮に引っ掛かった。


 どうやら単純な人物らしい。


 彼女はその隙に背後に回って剣で切りかかる。


 いかつい男は心臓を刺されて苦しそうに呻き声を上げる。



 「セーブ」



 一応セーブしとこう。


 これで問題ないだろう。


 いかつい男は心臓を刺された事で数秒後に死亡した。



 「ふぅー。何とか勝ったな」

 「ありがとう。でも今の現象って」

 「俺の魔法。セーブ&ロードっていうんだ。特異で唯一無二の魔法らしい」

 「セーブ&ロード?」

 「まあ簡単に説明すると俺と俺が仲間だと認識した対象のセーブやロードが出来るんだ。それでやり直した」

 「よくわからないけど凄いね。助かったありがとう」



 紫色の髪の美少女は満面の笑顔で俺に笑った。


 性格がいい奴らしい。



 「じゃあ俺はこれで」

 「ちょっと待って。お礼がしたい私の所属しているパーティーを紹介させて」

 「パーティーに所属しているのか」

 「ええ。まあCランクだけどね」

 「いいんじゃないか。ゆっくり昇格すれば」

 「うん」



 俺の手を引いて俺を連れ去る。


 異性の手で触れられたのは初めてだな。


 柔らかくて変な気持ちだ。


 心臓が少しだけ高鳴る。



 「あっ、そうだ名前。私はリア」

 「俺はラーク」

 「ありがとうラーク」



 リアは俺の手をしっかり掴みながら笑ってお礼をした。


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