6. 貴族社会
(今日は上手くやれたかな?)
お風呂から上がり、ベッドの上に座り込んだ。適度な疲れ具合が少し心地良い。ベッドサイドランプの淡い光で満たされた部屋の中、前世で培った足痩せマッサージの技術を駆使しながら、エリーズは今日の出来事へと思いを馳せた。
結局入学式は何も起こらないままお開きとなった。確かにリルはところどころ、というかかなりマナーを破っていたが、(わざとではないだろうが)それも別に注意しなかったし、そんなにひどいことにはなってないと思う。
それよりも、その後が問題そうだった。
入学式が終わり、制服に着替えたあと教室に向かったエリーズを出迎えたのは、好奇心の視線だった。
ベルナール王国四大名家の、長女。家庭教師にみっちり詰め込まれたから、そこそこ成績は良いし、たぶんそこそこ顔もいい。
それらの視線がこいつはどんな奴なんだろうか、というものなのか、それとも何か別のものなのかは分からなかったが、居心地の悪いことは事実だった。
けれどエリーズも伊達に十年貴族社会でやってきたわけではない。
先生に自己紹介しろと言われ、にっこりと微笑み、その嫌な空気を一掃した。それからはたぶんいい感じにできたと思う。
未だクラスで浮いている感じが否めないが、あと一週間もしたらどうにかなるだろう。何人か知り合いもいたことだし。
ついでにアランも何かを気を使ってくれた。やはり彼はこの学校のアイドル的存在、というか、かなりの人気者で、誰もが彼が言ったことなら何でも聞く、という感じだった。
当たり前の話ではある。かくいうエリーズもそうだ。この世界の政治は、ーー第一王子ではないにしてもーー彼に委ねられていると言っても過言ではない。彼の好みで、父の昇進、家の没落までもが決まってしまうかもしれない。そう思うと、本心を隠して彼に従うほかないのだろう。
(私は運良かったな)
エリーズになってから大変なことばかりだったけど、その分恵まれている、と自覚している。
(それにしてもまじでこれからどうなるんだか)
実を言うと、エリーズ自身そこまで家から追い出されることを気にしてはいない。適齢期になればどうせ宮廷ーーそれが叶わなかったとしてもーーどこかの家に嫁がされるに決まってるし、正直自分はこの家のお飾りでしかないんだと感じる部分が多々あった。
(とりあえず今日は徹夜して、手紙の謎を調べてみるか)
ずっと起きていたら、手紙が来る瞬間とか、手段も分かるだろう。
エリーズは大きな欠伸をして、そっとブランケットを被った。
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