3. 学校に入学

  私立フィエルテ学園は、ルソワール王国最大級の学校であり、宮廷の重職につくもの、高名な貴族など、位の高い家の子女が通う、いわゆる金持ち学校である。

  小等部、中等部、高等部とエスカレーター式で進学していくが、本当の金持ちは、中等部まで家庭教師でみっちり勉強し、編入試験を受け、高等部ーー十六歳の誕生日の翌日から入学するという噂だ。

  エリーズ・ベルナールもフィエルテ学園に通う生徒の一人。エリーズは、ルソワール王国四大名家と謳われるベルナール家の長女で、ついでにその噂の一人でもある。






  そして彼女は最大の危機にあった。






(でもそのリルって女に話しかけなければ良いのよね)


  エリーズは朝食を食べながら、しんみりと考えた。ちなみに今日の献立は、カボチャのスコーンに、生クリーム。そして枝豆のポタージュスープに、ハーブティーというものであった。カボチャのスコーンは焼きたてでほのかに甘く、生クリームとよくあって、エリーズの好きな食べ物ランキング、十位以内には楽々入る。

 スッキリとしたハーブティーとの相性も最高だ。


  今朝突然来た手紙のせいで、朝の彼女の思考は支離滅裂を極めていた。そのせいで日課にしている素振り百回も出来なかったし、何故か部屋に置いてあるサボテンの水やりも出来なかった。

  ようやっと落ち着き、考えだす余裕ができたのだ。ハーブティーを啜りながら、ゆっくりと思考を動かす。


(私は今詰んでる状況だけど、リルとの関わりがなければどうにでもなるんでしょ?もしかしたら、イベントあるのかもしれないけど。絶対接触しなければならない、みたいな。そう考えたら、神様って割とろくでもないものだったのかもしれない)


 勝手に頑張っちゃってください、という文面が思い起こされた。


(ま、もう考えても仕方ないか。どうしようもなくなったら、剣のスキル使えばいいし)


  ティーカップをソーサーに戻し、エリーズはそっと席を立った。何にせよ、今日は入学式。しかも来るのは有名な家の子女ばかり。前世の学校とは全然違うのし、自分で言うのもなんだけど、エリーズもそこそこ有名だから、気を張らなければならないのは確かだ。




「そろそろ馬車に乗れ〜」


  自室に戻った後、例の手紙を読み返したり、本を読んだりして時間を潰していれば、父に呼ばれた。

  そろそろ出発の時刻なのだろう。馬車、という乗り物に未だになれないなぁと思いつつ、玄関に向かい、馬車に乗り込む。


(友達できるか、なんて考えるの久しぶりだなぁ)


  あまり家から出させて貰えなかったから、久しぶりの感覚にドキドキしながら、馬車に揺られた。

 

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