あとの祭り
「うっ……」
ベルリアがドス黒くなった顔色のまま口をパクパクし始めた。
これはもうダメだな。
「ベルリア、息だ。息をした方がいいぞ。空気を吸わないと本当にあの世へと旅立つぞ」
「あ……マイ……ロード」
「ほら、ゆっくりでいいから、深く吸うんだ」
「は、はい。ス〜〜〜〜っ」
ようやく呼吸を忘れていたベルリアが深く空気を吸い、その直後ドス黒くなっていたベルリアの顔色がいつもの肌の色へと戻ってきた。
「落ち着けって。大丈夫だ。誰も怪我した訳じゃないから。まあ、流石にベルリアに斬りかかられた時は焦って余裕なくなったけど」
「マイロード、姫様! 本当に申し訳ありませんでした。このベルリア一生の不覚! いえ、もうこの一生は終わったも同然。この首掻っ捌いてお詫びいたします!!」
「いや、そんな事してもらっても」
「海斗、いいんじゃないか? 本人がそうしたいって言ってるんだから。ところでベルリア、どうやってその首を落とす気なんだ?」
「それはもちろん、マイロードから賜ったこの剣で……へっ……」
ベルリアが肉切り包丁を見て、目が飛び出るかと思うほど見開き、顔色は再び青くなり、口はパクパクし始めた。
「なっ……マイロードから賜った私の魔剣が…………折れてる……そんな……バカな」
「あ〜〜それな〜。ベルリアが斬りかかってきたから仕方なくな」
「私はマイロードに襲いかかっただけで無く、騎士の命たる剣まで……くっ、やはりこの命差し出す以外にありません。さあ、お斬り下さい。この愚かなる私を誅して下さい.お願いします」
「いや、いや、いや。俺がベルリアを斬るわけないだろ」
「そう言わず、スパッとお願いします。もうそれ以外にお詫びのしようがありません」
一応本気なんだろうけど、いちいちベルリアのセリフや態度が劇画チックというか大袈裟なんだよな〜。
「だから、そんな事しないから。これからも頼んだぞベルリア。今回はちょっとアレだったけど、これからだ、これから。ベルリアには頑張ってもらわないと困るんだって」
「そうはおっしゃいますが、剣を失った私は騎士では無くただの暗愚。この先マイロードのお役に立つ事は叶わないのです。剣のを失った私は存在価値がありません。やはりひと思いにスパッと!」
「わかった」
「では!」
「いや、そうじゃ無くて、剣はこれを使ってくれ」
「こ、これは! ま、まさか、これをいただけるという事でしょうか!?」
「ああ、特性で『折れず』がついてるからもう折れる事もないだろ。ベルリアにピッタリだ」
「おおおぉぉ……マイロード使用されていたこの白麗剣を。なんて美しい剣なんだ。この白い刃。素晴らしい。マイロード! このベルリアこれからは生まれ変わった気持ちで粉骨砕身マイロードにお仕えいたします。この剣が折れるその時まで絶対の忠誠を!」
立ち直ってくれたみたいで良かったけど、立ち直り早いな。
だけどひとつ突っ込むとベルリア、折れるその時までってその剣は折れないんだって。
まあ、ずっと忠誠を誓ってくれるって意味だろうからいいんだけど。
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