ベルリアの言い分

「マイロード、もう見切りましたのでこちらに攻撃が届く事はありません.ご安心ください」


実際に飛んでくる爪を全て叩き落としているので本当に見切ったのだろう。

これなら防御はベルリアに任せて大丈夫だろうから、攻撃は俺だ。

ベルリアの背後からバルザードの斬撃を飛ばすが、先程同様に躱されてしまう。

やはり、このモンスターを倒すには近接で直接斬り伏せるしかない。


「ベルリア、近づけるか?」

「もちろんです。マイロードは背後からついてきてください」


そういうとベルリアがメタルモンスターへ向けて駆け始めた。

てっきりジワジワと距離を詰めていくとばかり思っていたので、ワンテンポ遅れてしまったが慌ててベルリアについて走り出す。

メタルモンスターは爪を飛ばしそのままベルリアへと向かって突進してきた。

ベルリアは爪を肉切り包丁で弾くと、その場でヒラっと上空へとジャンプしモンスターを躱すが、突進してきたモンスターの先には当然ベルリアについて走っていた俺がいる。

ベルリア! まさか俺がいる事を忘れてるんじゃないだろうな。

既に走り出していた俺は左右へ避ける事を諦め、踏み込みそのまま斜め前方へと思いっきりジャンプした。

ベルリアのように華麗とはいかないまでも、レベル25のステータスは俺の身体を上空へと押し上げ辛うじて敵モンスターの突進を躱す事に成功し、そのまま前方へと転がりすぐに起き上がり振り向くと既にメタルモンスターもこちらへと振り向いていた。

守りをまかせたはずのベルリアは俺の後方にしかいない。

つまりは俺を守ると約束したはずのベルリアはその役目を果たす事はないので、俺がやるしかない。

モンスターの動きに集中を高め、剣を持つ手に力を込める。

3度突っ込んできたメタルモンスターの動きに合わせ白麗剣で身体を守りつつ、バルザードに切断のイメージを乗せて斬りつける。

白麗剣を合わせたものの、モンスターの勢いを完全に殺す事は出来ず、身体が弾かれたせいでバルザードの斬り込みが浅い。

しとめ損ねた。


「マイロード、お任せください。『アクセルブースト』」


俺の攻撃により動きの鈍ったメタルモンスターに向けて、俺の背後からベルリアが躍り出て肉切り包丁を加速させ斬りつける。


「ふ〜やはり私の敵ではありませんでしたね」


ベルリアの一撃をくらったメタルモンスターはそのまま消失した。

あいりさんの方を見ると、ちょうどあいりさんも『斬鉄撃』でメタルモンスターを葬り去ったところだった。

どうやら、今回は、シルとルシェの力を借りる事なく二体とも倒す事ができたみたいだ。

それはそうと……。


「ベルリア、ちょっといいか」

「はい、どうかされましたか?」

「いや、何でさっき一緒に出なかったんだ? おかげでちょっと危なかったんだぞ」

「それは、マイロードにも姫様にも釘を刺されていましたので、今回は突っ走らずしっかりと敵の動きを見定めた上で向かわせていただきました」


たしかに「一人で突っ走るな」とは言った。

それにルシェも「今度は燃やすぞ」と脅していた。

敵の動きを見定めるのも重要だし間違いではない。

だけど、前衛のサーバントが主に戦わせて敵の動きを見定めた上で敵に相対するってどう考えてもおかしい。

ベルリア完全に間違えてるぞ。



お知らせ

HJ文庫モブから始まる探索英雄譚9が7/1に発売決定です!

秋田書店 コミック版モブから始まる探索英雄譚4は7/25発売!

アニメ放送まであと1ヶ月。

7月はモブからをよろしくお願いします。

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