軽い命
四人とも魔核を吸収して終わったようだ。
四人を待っている間にひと息ついたので、俺の調子も完全に回復した。
「それじゃあ、そろそろ進もうか。ルシェ、次から『炎撃の流星雨』は本当に危なくなった時だけにしような」
「わかってるって。さっきは海斗がヤバかっただろ」
「まあ、そうだけど」
「ルシェ様、助かりました」
「ふふっ、そうだろ」
「ルシェ姫の判断は流石でした」
「ふふっ、まあ、それほどでもないけどな」
たしかにルシェのおかげで助かったので、これ以上は何も言うことはできない。
「とにかく、あの犬みたいなやつは要注意だ。正面に立つのは、できるだけ避けた方がいい。本当に一瞬で動けなくなってしまったんだ」
「そうだな。特に前に出る、私やベルリアは注意した方がよさそうだ」
「そうですね。それにもしかしたら他のモンスターも特殊攻撃を持っているかもしれないので注意して進みましょう」
わかってはいたが、やはり十九階層は一筋縄ではいかない。
敵が硬いというだけでも手強いのに、突然未知のスキルにやられてしまった。
今の俺では同じ攻撃をくらってしまえば耐える術はないのでくらわないように立ち回る以外にはない。
当然また、あの犬型が現れれば注意を払いながら戦うが、それ以外のモンスターが突然同じようなスキルを使ってきたら即座に対応できるか自信はない。
この階層のモンスターの動きは総じて初動から速い。常に側面をとりながら戦うのは難しいだろう。
モンスターの特性を把握するまでは、速攻。
本来なら相手の動きをみて動きたいところだが、未知のスキルを発動されるくらいなら、少し強引にでも敵の攻撃をくらう前に速攻で倒すのが一番リスクが低い気がする。
「海斗さん、体調は大丈夫なのですか?」
「ああ、もう大丈夫みたいだ」
「無理しないでくださいね。わたしももう少し上手くサポートできればよかったのですけど」
「いや、ヒカリンの魔法には十分助かってるから」
ヒカリンにはなんの落ち度もないのに気を遣わせてしまって申し訳ない。
並んでメタリックなダンジョンを進んで行くが、先程まとめて倒したせいかモンスターに出会わない。
「ベルリア、敵がかなり硬いけどその肉切り包丁で大丈夫か?」
「はい、血を流さないようなので本来の性能を引き出す事はできませんが、何度か戦闘を経たおかげでようやく手に馴染んできました。この階層程度の敵であれば問題ありません。この肉切り包丁はあの黒豚には過ぎた代物だったようです」
「それはよかったけど、無理して折れても代わりは無いからそのつもりでな」
「もちろんです。マイロードからいただいたこの騎士の命たる剣を失うことなどあり得ません」
「……そうか」
ベルリア、騎士の命たる剣を今まで何本折ってきたと思っているんだ。
今ので六本目じゃなかったか?
本当に命なんだったら何回死んだかわからなくなるぞ。
意気は買うけど相変わらずベルリアの言葉は軽いな。
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