ジャグル

光のサークルが五本の槍を弾き返し、弾かれた槍めがけてベルリアが二刀を振るう。

再び俺に向かって来ようとする槍を素早い動きで撃ち落としていく。


「ほう、それを凌ぐか。矮小なる者よ。我が名乗るにふさわしい力はあるようだな。我はジャグルだ」

「ごちゃごちゃうるさい! 名乗るにふさわしい? 偉そうに! 誰に口を聞いてるんだ! 豚風情が喋るな。さっさと燃えて焼豚になれ! 『破滅の獄炎』」


ジャグルと名乗る階層主にキレたルシェが問答無用で獄炎を放ち、その直後炎がジャグルに襲いかかるが、ジャグルは、左手に持つ巨大な黒い盾を出して構えた。

迫る獄炎が盾によって阻まれ、左右に割れた。

それをみたベルリアがジャグルに向け加速して、盾の脇を抜けようとするが、今度は手に持つ巨大な肉切り包丁のような剣でベルリアに斬りかかる。

ベルリアは空中へとジャンプし迫る剣の一撃を躱すが、ジャグルはその巨体に見合わぬスピードで切り返し、空中のベルリアに向け二撃目を加えた。


「ベルリア!」


ベルリアは咄嗟に二刀をクロスに構え肉切り包丁の一撃を受け止めるが、威力を逃しきれずに弾き飛ばされる。


『アイアンボール』


ベルリアを援護するために、後方のあいりさんが鉄球を放つが、ジャグルはあっさり盾で鉄球を受け流してしまった。

強い。

こいつ、ただの黒豚じゃない。


「マスターフォローします。マスターに力を! 『ウィンガル』」


ティターニアがスキルを発動してくれたので、俺もすぐにナイトブリンガーの効果を発動し、ジャグルに向かって走る。


「私だっているのよ!」


ミクは無事に恐慌状態から回復したようでスピットファイアを連射しジャグルの気をひいてくれる。

俺は気配を殺してジャグルへと迫り、そのまま後方への回り込もうとするが、その瞬間目の前が真っ暗になり強烈な衝撃と共に後方へと飛ばされた。


「グウッ! なんだ!」

「マスター! やらせません。これでもくらいなさい」


倒れた俺の頭上をドラグナーの銃弾が通過し、金属が衝突するような音が響く。


「下郎が、この私の前を横切ろうなど甘いわ」


飛ばされた衝撃で頭が振られ、頭がボ〜ッとするが、無理矢理身体を起こし手を地面につきながら必死にシルの下へと駆け込む。


「ご主人様! お身体は大丈夫ですか?」

「ああ、なんとか。シル、おれはいったい……」

「ご主人様があのモンスターと交差する瞬間、あのジャグル、いえ黒豚が、あろうことかご主人様にあの盾をぶつけてきたのです! 許せません!」


どうやら、さっきの衝撃はあの黒い大楯でいわゆるシールドバッシュをくらったらしい。あの大きさだ。至近でやられると俺の避ける場所などない。

頭は痛いが、幸いそれ以外には大きな怪我はなさそうだ。逆によくあれをくらってこの程度で済んだものだが、あの瞬間俺は確実にナイトブリンガーの能力を発動していた。

にもかかわらず、攻撃を合わされたということはあの階層主には効果がなかったということだ。

つまりは、あいつには俺のいつものスタイルが通用しないということだ。

これだけで俺にとってはかなりきついがやるしかない。

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