ウィル・オー・ザ・ウィスプ

バンシーたちの魔核を回収するがやはりこのメンバーは心強い。


「ずっと思ってたけどティターニア、妙に積極的になってないか? 海斗と連携が取れてる気がする」

「そうでしょうか。先日の戦いでマスターとの絆が深まったとは思います」

「それにしゃべり方が、変わってないか?」

「先日の戦闘で、マスターとのやり取りもかなり慣れてきたので」

「おい、海斗、まさかティターニアになにかしたんじゃないだろうな」

「ルシェ、そんなことあるわけないだろ」

「ティターニア本当か?」

「はい、マスターにはかばっていただいたり感謝しています」

「海斗がティターニアをかばう? それは下心だな」

「ルシェ! あるわけないだろ。ふざけてるとカードに戻すぞ」

「おい、ちょっとした冗談だって。そんなに怒らなくてもいいだろ」


これは、冗談抜きではっきりと否定しなければならない。間違っても変な誤解を生むと俺の人生が詰んでしまう。

ただ、今日の戦いを見ているとティターニアの働きがかなり良くなっているのは事実だ。

タイミングよくサポートしてくれるし、何よりも目を見てハッキリと話してくれるようになったのがよかった。

ただ唯一の問題は魔核だ。

なにもしなければ消費しないが、ティターニアが参戦してくれることで当然魔核の消費量が増えてしまった。

こればかりは仕方がないので先を急ぐことにする。

しばらく進むと、遥か前方に青白い光がいくつか浮いているのが見える。


「シル、あれは敵か?」

「気配は薄いですが、おそらく霊の一種だと思われます」


注意を払いながら徐々に距離を詰めていくが、近づいてみてもやはり青白い光がユラユラと浮いているだけだ。


「もしかしてあれって人魂か?」

「ダンジョンだしウィル・オー・ザ・ウィスプじゃない?」

「剣は効かないよな」

「魔法か聖水なら効果ありそうだけど」

「あんまり害はなさそうにも見えるけど」


ひとつの大きさはバスケットボールぐらいの大きさだが、こちらを認識していないのか特に動きが変化する様子もない。

俺たちは聖水を手にして近づいていくが、五メートルほどの距離まできた瞬間急に人魂が旋回して集まり始めた。

俺は慌てて聖水を吹きかけようとするが、人魂は上昇してそのままひと塊りになりその大きさは数メートルにもなっている。

直感でわかる。なんかやばい。


「みんな下がれ!」


俺は急いで距離を取ろうと後退する。

人魂から俺たちに向けて青白い炎が放たれる。


「ご主人様、その炎ただの炎ではありません。負のエナジーを感じます。くらえば無傷ではすみません」


シル、心配してくれて本当に嬉しいけど、タダですまないのは見ればわかる。

飛んでくる炎が熱いのに寒気を覚える。


「凍るのです。『アイスサークル』」


カオリンがスキルを発動して人魂の集合体を氷へと閉じ込めるが、すぐに氷から蒸気が立ち上り溶けていく。

俺は、氷が溶けるタイミングを見計らい下がった位置からバルザードの斬撃を放つが、一瞬斬撃により揺らめいたもののダメージを与えることはできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る