ベルリアはアピールしてくる
週末になりパーティで十八階層に潜っているが、今週は色々濃かったので随分久しぶりな感じがしてしまう。
ベルリアにかけてもらった『ダークキュア』と追加で飲んだポーションのおかげで動けなくなるような筋肉痛は避けることができたが、数日が経過したというのにまだ身体の芯に鉛が入ったような、なんとも言えない気だるさがある。
ステータス上は完全に回復しているので、スキルを連発したことによるダメージはステータスに現れないところにも影響を残しているらしい。
「海斗、なんか調子悪そうね」
「う〜ん、まあ病気とかじゃないから大丈夫だと思う」
このメンバーで五階層を回ることはないとは思うが、念のために先日の出来事を情報共有しておく。
「それってこの階層よりも下ってことなのですか?」
「結局何階層だったのかはわからないけど、あの敵の感じはそうだと思う」
「それってほとんど詰んでるってことじゃない」
「運が良かったとしか言えないな。ティターニアと隼人が頑張ってくれたから運良くどうにかなったけど、正直シルとルシェ抜きは厳しかったよ」
「マイロード、横から失礼します。そのようなモンスター私がいれば敵ではありません。私一人で軽く倒せたと思います」
「ああ、そうかもな」
おそらく、ラミアはベルリア一人で倒せる相手ではなかったと思うが、自分の名前がでなかったから、必死にアピールしてきたのだろう。
ある意味健気と言えなくもないが、ベルリアらしくて笑ってしまいそうになる。
転移先のダンジョンのことを話しながら、出現したモンスターを倒し進んでいく。
戦闘にはいると身体に痛みはないが、反応速度が鈍くなっているのと、少し力が入りにくい気もする。
不調をおふだと聖水を多用することでカバーしながら探索を続けるが、モンスターを倒しながら進んでいくと、ダンジョンの真ん中で泣き声が聞こえてきた。
そのまま進んでいくと、老婆と思しき人がダンジョンの真ん中でうずくまって泣いているのが見えた。
あやし過ぎる。
「みんな、あれどう思う?」
「どうもこうもないでしょ。ダンジョンの真ん中にお年寄りが一人で迷子ってありえないでしょ」
「そうだよな。あれもバンシーなのかな」
「海斗さん、それ以外になにかあるのですか?」
「いや、この前は子供だったのに、今回は年寄りだがら」
「バンシーにもバリエーションがあるのかもしれないのです」
「まあ、私にまかせてくれ。『アイアンボール』』」
「グェッ」
あいりさんが、怪しさ全開の老婆に容赦なくノーモーションで鉄球を叩き込むと、腹に鉄球がめり込み老婆が変な声をあげた。
「まだダメか。頭を狙った方が良かったな」
「キェェエェエエェ〜」
あいりさんがとどめをさそうと近づいていくと、老婆が再び奇声を上げ姿を消した。
「やっぱりバンシーだったわね」
「そりゃ、そうだよな。さすがに不自然だよ」
「そんなこと言って、この前は完全に騙されかけてたじゃない」
「万一ってことがあるだろ」
「ダンジョンでは有り得ないシチュエーションだと思うけど」
「それより、消えたバンシーを探さなきゃ。ティターニアわかるか?」
俺は前回バンシーの位置を特定することができたティターニアに声をかけるが、
「海斗、大丈夫だ。私にまかせてくれ」
あいりさんはそう言って『アイアンボール』をなにもない左前方へと放った。
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