危機一髪
「海斗先輩!」
野村さんの声と共に右方向から飛んできたボウガンの矢がラミアの右目に刺さった。
「ぎゃああああああああ〜!」
ラミアが目を押さえて悶え苦しんでいる。
俺はその隙に後方へと離脱し、急いで低級ポーションを飲み干す。
助かった。完全に殺されるところだったが野村さんに救われた。
「野村さん……」
苦しむラミアを追撃が襲う。
野村さんの方を見ると他の女の子たちも一斉にラミアへ向け遠距離攻撃をかけている。
「海斗先輩、私たちだって手伝います。先輩たちだけに無理ばかりさせられないです」
助かった……
ギリギリの状況で、野村さんたちに助けられるとは思っていなかったが、このレベル差で唯一とも言える弱点の目を正確に射抜くとはさすがとしか言いようがない。
「お前らか〜! 私の目が……目が〜。お前らの目を、目をくり抜いて食ってやる! 絶対だ。絶対食ってやる!」
ラミアの残った目は血走り、野村さんたちを見据えている。
「野村さん! 引くんだ!」
「あ……」
お礼の言葉よりも今はラミアをどうにかする方が先だ。
だが、野村さんたちが俺の声に反応する気配がない。
もしかしてラミアの威圧に押されて動けないのか。
俺は全速力で野村さんたちの元へと走り、向かってくるラミアに対しバルザードの斬撃を飛ばすが、ラミアの動きを止めることはできない。
「野村さん! 引け! 引いてくれ! 長くはもたない!」
ラミアが三叉槍を振りかざしこちらへ向けて迫ってくる。
正直ラミアと近接で斬り結ぶのは避けたい。
いくらなんでもこのレベルの相手と正面からやり合うのは得策ではないが、ここで俺が引いてしまえば野村さんたちが確実に死ぬ。
それはダメだ。絶対にダメだ。
俺たちは野村さんたちを助けにここまで来たんだから、ここで見捨てる選択肢はない。
俺は覚悟を決め、二刀を構え、集中力を高め再び自分の中のスイッチを入れる
ラミアの三叉槍が伸びてくる。
パワータイプではない俺が正面から受け止めるのは無理なので、魔刀を向かってくる三叉槍の側面に沿わせ滑らせながら、サイドへと回避する。
すぐに横凪に三叉槍が迫ってくるので、必死にかいくぐり避ける。
一瞬でも集中力を切らせればやられる。
低くした姿勢から前方へと飛び出し、ラミアとの距離を詰め、三叉槍の射程を潰すが踏み込んだと同時に尻尾の攻撃が襲い掛かってくる。
どうにかやりすごすが、すぐに返しの一撃が向かってくるので今度はジャンプして避ける。
やはり、この距離で戦うということは、ラミアの絶え間ない攻撃に晒されることを意味しており、一撃を躱すごとに体力と精神力が一気に削られる。
野村さんたちもようやく動けるようになったようで、後方から離脱し始めたが、まだ時間が必要だ。
「おおおおああああああ〜!」
ラミアの背後から隼人の雄叫びが聞こえてきた。
ラミアと距離が近すぎて姿を確認することはできないが、おそらくなにかの攻撃をしかけたのだろう。
一瞬ラミアの動きが止まった。
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