誤解

放課後になるのを待って早速隼人と一緒にダンジョンへと向かう。

真司も誘ってみたが、今日は前澤さんと予定があるようなので二人で向かうことにした。


「隼人、野村さんたち本当にダンジョンにいると思うか?」

「可能性としてはあるだろ。俺たちも遠征でトラブルからダンジョンで一夜を過ごしたし。そんな状況に颯爽と助けに入る俺ってイケてると思わないか?」

「はい、はい」


問題は、目的の四階層までどうやって行くかだけど、普通に向かっていたら探す時間がなくなってしまうし、もし急を要する状況なら、少しでも早い方がいい。


「隼人、内緒にできるか?」

「いったいなんの話だよ」

「これから俺がやることを絶対に口外しないでほしいんだ」

「よくわかないけど、別にいいぞ」

「それじゃあ、とりあえず一階層をちょっと進むか」


隼人なら大丈夫だろう。普段は軽いところもあるけど信用はできる。

俺と隼人は一階層を人の気配がしない場所まで進む。


「ここら辺でいいかな。それじゃあ、俺と手を繋ごう」

「…………」

「どうした? 早くしろよ。急いでるんだろ」

「そういうことか? 内緒ってそういうことだったのか? 俺は絶対嫌だ!」

「なに言ってるんだよ。早く手を繋げって」

「お断りだ! お前のことは友達としか見れない。俺はそんなつもりはない」


隼人はいったいなんの話をしているんだ? 話が噛み合わない。


「そんなつもりは無いってどういう意味だ?」

「俺は女の子が好きなんだ。だから勘弁してくれ」

「もしかして……隼人それは違うぞ。誤解だ」

「すまない海斗! 本当に勘弁してくれ。今後の関係性にも影響がでる」

「いや、待て。俺だって女の子が、春香が好きなんだ。そんな気は一切ない。これは違うんだ。手を繋ぐのは違う。違う理由があるんだ。本当だ! 信じてくれ隼人!」


隼人の考えていることがわかってしまった。いきなり、ダンジョンのひと気のない場所で、男同士手を繋ごうなって言われたら俺でも勘違いしてしまうかもしれない。


「本当か? 本当に信じて大丈夫なのか?」

「ああ、俺が春香のこと好きなの知ってるだろ。そんなことはありえない」

「たしかにそうだな。それじゃあなんのために手を……」

「説明するよりやった方が早い。とりあえず手を貸してくれ」

「……変なことはするなよ」


いい加減変なことを言うのはやめてほしい。

俺は、無言で隼人の手を取り『ゲートキーパー』を発動して四階層へと飛んだ。


「え!? どうなってるんだ? ここ一階層じゃないよな」

「ああ、ここは四階層だ」

「四階層!? まさか、いやでもこの感じ確かに四階層だな。なんで……」

「俺のスキルだよ」

「海斗のスキル? まさか転移できるのか?」

「ああ、そんなところだ。行ける場所は行ったことのある階層のスタート地点だけだけどな」

「本当に転移スキルってあるんだな。これ完全にチートだろ。これが使えるだけで、ダンジョン攻略が根底から変わる。海斗すごすぎだろ。たしかにこれは人には言えない。言わない方がいいな」

「ああ、だから内緒で頼む。それより早速進むか」


誤解も解けたところで先を急ぐことにする。

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