キョンシー
「あいりさん、そのおふだどこから持って来たんですか?」
「家にあったのを借りて来たんだ」
「まさか、それをキョンシーに貼り付けるんですか?」
「ああ、やってみよう」
やはり本気の様だ。
とりあえず、あいりさんがやるつもりなら任せてみるしかない。
俺は俺の役割を果たすだけだ。
見る限りぴょんぴょん飛んでいるだけで、可動域も狭そうなのであっさりと倒せそうな気はする。
前衛の三人でキョンシーへと向かって行く。
俺は真ん中のキョンシーを相手取ることにするが、見れば見るほど不思議な敵だが噛みつきだけには気を配る。
キョンシーは俺に向かって直線的な動きで跳ねながら近づいてくる。
俺はタイミングを計り、間合いに入った瞬間、右手に持つバルザードを振るうが、その瞬間今まで直線的で緩慢な動きを見せていたキョンシーが、ありえない様なアクロバティックな動きを見せて上空へと回避し、俺のひと振りは空を切った。
「なっ!」
上空へと回避したキョンシーはそのまま上空で回転し、降下しながらドロップキックを浴びせかけてきたので、咄嗟に剣をクロスして攻撃を防ぐ。
直撃は防いだが、強烈な衝撃が身体を貫き体勢を崩す。
そこへ続けざまにキョンシーが連撃を加えてくるが、硬直した体勢のままなのにまるでカンフーのような攻撃
だ。
突き出した腕と脚を使い、息もつかせぬ勢いで攻撃をしかけてくるので防戦一方となってしまう。
敵は武器を持っているわけではないので純然たる肉弾戦だが、こちらは剣で応戦しているというのにキョンシーの肉体は異常な硬度を保っているのか一切傷ついた様子は無い。
こちらは二刀流だが、素手である敵の回転速度には及ばない。
応戦を繰り返すうちに徐々に被弾する回数が増えてきている
「マスターがんばって……『ウィンガル』」
ティターニアが俺に向かってスキルを発動してくれたようだ。
『ウインガル』の効果のおかげで俺の身体が軽くなり、剣速が僅かに上がる。
剣速が上がった事により、なんとかキョンシーの攻撃を捌けるようになったので、少しだけ余裕が出来た。
「ティターニア助かった!」
息もつかせぬ蓮撃を見せるキョンシーだが、キョンシー自身はもともと息をしていないのだろう。全く息が上がる様子は無いので、守勢に回っていてはこちらが一方的に体力を削られるだけだ。
俺は防御の為では無く、攻撃の為に剣を振るう。
『ガッ』
硬い! やはりこのキョンシーの身体は異常に硬い。敵の攻撃の合間を抜い魔刀で脇腹を斬ったが、硬くてダメージがはいった気配が無い。
魔刀の効果が発動し、帯電しているのが見て取れるが動きが鈍ぶる様子も無い。
このキョンシーと言うモンスター名前の響きやその特異な風貌とは異なり強い。
純粋に近接戦闘は俺よりも上かもしれないが、こんな階層序盤で負けるわけにはいかない。
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