誕生日プレゼント

このカフェの人気メニューはホットサンドだったので、俺も春香もそれを頼んだ。

飲み物は、俺はセイロンティーを頼み、春香はラズベリーティーを頼んだ。

待っている間も二人で巨大な水槽を眺めているが、未だにここがカフェだという事が信じられないレベルのアクアリウムだ。小さい魚もかなりの数いるが、ナポレオンフィッシュや小型のサメなど結構大きい魚も混じっている。


「海斗、このカフェどうかな?」

「うん、凄いな。感動するレベルだよ。連れて来てくれてありがとう」

「よかった。絶対海斗は気にいると思ったから思い切って来てみてよかったよ」

「ここなら何時間でもいれる気がする」

「あんまり長居するとお店に迷惑だよ」


水族館でも感じた事だが、水槽の魚をバックに見る春香は乙姫様か水の精霊のようでいつにも増してかわいい! しかも俺の為にここを選んでくれたのがわかるのでとにかくテンションが上がってしまう。

出てきたホットサンドは、おそらく普通の味だったとは思うけど、このロケーションと春香と一緒というエッセンスが加わり、絶品と言っても過言では無い味わいだった。


「そういえば、野村さんはどうなったのかな」

「昨日でしっかり巣立っていったよ。無事に三階層もこなせるようになったし、新しいパーティメンバーも見つかりそうだから。今日も新しいメンバーとお試しで潜っているはずだよ」

「そう、よかった。これで野村さんも目的を果たせそうだね。海斗はやっぱり面倒見がいいんだね」

「いや、野村さんが頑張ったからだよ。俺は別に何もしてないよ。ちょっとフォローしただけだから」

「ふふっ……海斗は変わらないね。昔から……」

「えっ? 何が?」

「ううん、なんでも無いよ」


何か含みがある言い方だが、よくわからないのでまあいいか。今日は純粋に春香とこの場を楽しみたい。

セイロンティーもいつにも増して美味しい。やっぱり俺には苦いコーヒーよりもこちらの方が向いている気がする。紅茶を飲んでいると春香がテーブルの上に誕生日プレゼントらしき物を取り出した。


「海斗、お誕生日おめでとう。これわたしから誕生日プレゼント」

「あ、ああ、ありがとう。開けてもいい?」

「うん」


春香がくれたプレゼントは小さめの箱のような物だったので、その場で包装を開いてみる。


「時計!」

「うん、あんまり高い物じゃないけど、ダンジョンで暗くてもライトで時間がわかるのと、ぶつけても壊れない時計。写真で海斗が黒い格好をしていたから黒がいいかなと思って」


包装を開くと箱の中には強度が売りの黒色のデジタル式の腕時計が入っていた。


「つけてみていいかな」

「うん」


早速左腕に着けてみる。


「これ、欲しかったやつだよ。ありがとう、探索でも使えそうだから大事にするよ」

「本当? よかった。でも、その腕時計はハードユース仕様だから大事にしなくて大丈夫だから、どんどん使ってね」

「ありがとう」

「何がいいか迷ったんだけど、わたしは海斗から腕時計貰ったから、どうせなら同じ腕時計がいいかなと思って」


このシリーズの時計は何度か買おうかと思った事があるが、今まで買った事はなかった。それを春香が誕生日プレゼントにくれるとは思ってもみなかったから無茶苦茶嬉しい。

今まで母親からは誕生日プレゼントをもらう事はあったが、それとは全く違う喜びを感じる。間違いなく俺の誕生日史上一番嬉しいプレゼントだ。

明日からダンジョンでもこの時計をつけて潜るのは決定だ。

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