ダンジョン中毒(微)

その後も順調に二階層を探索していたが、やはり問題はスケルトンだった。

ボウガンの効果が薄いスケルトンには近接戦闘が必須の為、ゴブリンのように遠距離からノーリスクでしとめるという事は難しい。

探索を続けるうちにゴブリンとの戦闘は問題無くこなし、どんどん手慣れてきたが、この日二体目のスケルトンとの戦闘になった途端、明らかに動きが悪くなり苦戦し始めた。

一体目との戦闘経験からスケルトンと正面から切り結べば、どうしても力負けするので何度か武器を合わせる場面はあったが、基本的に大きく避けながら、カウンターで攻撃を試みているのだが、野村さんの体格もあってリーチがスケルトンのそれよりも短い為にダメージを与える事が出来ずに苦戦している。

俺は苦戦しているのを見て即ティターニアにスキルを使用してもらうべく指示を出す。


「いきます……精霊の加護を『ウィンガル』」


スキルによるブーストがかかり、野村さんの動きが少し軽くなった気がするけど、やっぱりティターニアの声が小さい。野村さん相手に人見知りしているのか? それとも慣れてもこれなのか?


「ボギンッ」


ようやく野村さんの一撃がスケルトンの足を捉え砕いた。

スケルトンの右足を砕いてからは危なげなく倒せたが、野村さんの適正は体格や体力的な点からも中衛から後衛寄りなので、先に進むなら早目にソロではなくパーティを組んだ方がいいな。


「それじゃあ、今日はそろそろ戻ろうか」

「はい! ありがとうございました」


今日は結構いい感じだったな。数もこなせたし野村さんの経験も上手く積めたと思う。

明日は月曜なので久し振りに一人で一階層へ潜ろうかなと考えながら家路に着いた。

翌日、放課後になったので教室を出てダンジョンに向かおうとしていると背後から声をかけられた。


「先輩! どこにいくんですか? 今日もお願いしますね」

「あれ? 平日も潜るのか? 確か週末探索者じゃ無かった?」

「いえ、今しかないと思うんで、毎日お願いします」

「兄弟は大丈夫なのか?」

「はい、ご飯は朝作って来ました。なので大丈夫です!」

「そうか……じゃあ一緒に行こうか」

「はい、行きましょう!」


てっきり週末だけ一緒に潜るとばかり思っていたが、そうではなかったらしい。

どうせ一階層に潜るだけだったから、特に問題も無いし今日も野村さんのフォローに努めるか。

それにしても、野村さんもダンジョン中毒化しかけてるんじゃ無いだろうか。


「あ〜だけどダンジョンに潜る前にダンジョンギルドに寄ってから行っていいか?」

「もちろんいいですよ」


俺は野村さんを連れて先にダンジョンギルドへと向かった。


「日番谷さん、ちょっとご相談があるんですけど」

「はいなんでしょうか? デートのお誘いでしょうか?」

「なっ……!」

「ふふっ冗談ですよ」

「日番谷さんってそういう冗談を言うタイプでしたっけ」

「親しい相手には結構冗談言いますよ」

「そうなんですか? 日番谷さんとも付き合い長くなって来ましたもんね」

「それでどうされましたか?」


日番谷さん自分から振っておいて切り替えが早いな。


「実はこっちの子なんですけど、俺の後輩なんですよ。それで今ソロなんですけど、よかったらパーティメンバーを探してもらえないかと思って」

「今どのぐらいのレベルなんでしょうか?」

「今はLV6で二階層なんですけど、今月いっぱい俺と一緒に潜ってるんで、月末には三階層も普通にいけると思います」

「じゃあ、来月以降に三〜四階層で活動するパーティ希望という事ですね」

「そうです。ただ女の子なんで、女の子のいるパーティの方がいいとは思うんです。それと希望は中衛から後衛です」

「わかりました。今メンバー募集中のパーティも含めて調べておきますね」

「ありがとうございます」


日番谷さんにお願いを済ませてダンジョンへと向かう。


「海斗先輩、色々ありがとうございます」

「あぁ、結構日番谷さんは頼りになるから」


ちょっとお節介だったかもしれないが、来月いきなりメンバーが見つかるとは限らないので、今から当たっておいた方がいいだろう。

野村さんにもいいパーティが見つかるといいな。

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