スケルトン戦

「やっぱりスライムとゴブリンだと経験値が違うんですね。こんなにあっさりレベルアップするとは思いませんでした」

「多分一階層での成長限界ってあるんだと思う。俺もLV3以上は上がらなかったし」

「それじゃあ、この際せっかくだからどんどんいきましょう」


野村さんはレベルアップして更に自信を深めたのか、すぐに次のゴブリンに向かって歩き出す。


「野村さんすごいな。もうゴブリンに慣れて無いか?」

「慣れては無いですよ。そもそも接近戦になったら危ないのは自分でもわかってるんで。やっぱり先輩達がいてくれる安心感が大きいんですよ」

「もう少しレベルアップしたら近接戦闘もやってみた方がいいな」

「わかりました。でもまだわたしには早いです」


俺もLV3〜4でゴブリンと近接戦闘を繰り広げるのは滅茶苦茶きつかった。

俺は盾を使用したが、女の子である野村さんは体力的にも盾で防ぐよりタイミングとスピードで勝負した方がいい気がする。

魔核銃を使用すれば簡単だが、イニシャルコストとランニングコストが二階層では厳しすぎる。


「ご主人様、モンスターです」

「海斗先輩、見つけるの早すぎませんか? これって完全にチートじゃないですか?」

「チートってそこまででもないだろ」


シルに言われた方向に進んでいくと、そこにはゴブリンではなくスケルトンが立っていた。


「海斗先輩! 骨ですよ、骨! 理科室のアレです!」

「あれが有名なスケルトンだ。一応武器を持ってるようだから気をつけような。ボウガンじゃなくてタングステンロッドでいった方がいい」

「これですね。重いです。普通に地上だと振れない重さですよ」

「間合いだけ注意して、後は足を狙ってフルスイングだ」

「やってみます」


野村さんが両手でタングステンロッドを構えて、すり足でゆっくりと進んで行く。

ゆっくりと確実に距離を詰めていく。

スケルトンの移動速度はゴブリンと比べても遅いので、じっくりといくのは正解だろう。

スケルトンも野村さんに気付き、手に持つ古びた剣を振りかぶりながら向かってくる。

先程のゴブリン戦に比べて、後方からでも野村さんが緊張しているのが伝わってくる。

距離はすぐに詰まり、スケルトンが剣を振るって野村さんに攻撃をかけてくる。

スケルトンのハンドスピードは特別速くは無いが、遅くもないので回避が遅れると普通に斬られる。

野村さんは、すり足のまま後方へと避けて剣を躱したが、そのままカウンターに出る事は出来なかった。

かなり遅れてタングステンロッドを振るうが、明らかに間合いが遠く届いていない。


「野村さん! 落ち着いて! 避けたら踏み込んでから足を狙うんだ」


アドバイスを送るが、野村さんからの返事はない。

スライム以外のモンスターとの初めてとなる近接戦闘で、完全に余裕が無くなっている。

いざとなれば、ベルリアにも参戦させる必要があるかもしれない。


「ベルリア!」


ベルリアに声をかけるとこちらに視線をよこし、頷いた。

どうやらベルリアも俺の意図が理解できているようなので安心だ。

俺はそのまま、後方から野村さんの戦闘を見守る。

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