ハンバーグカレーと学費

「海斗先輩〜。今日はありがとうございました。なんとか自分だけでゴブリンを倒す事ができました」

「ああ、頑張ったな。大したもんだよ」

「でも、お借りしたボウガンと先輩が横にいてくれたおかげなんで、わたし一人じゃまだ無理です」

「まあ、こればっかりは慣れだからな〜」

「ちなみに海斗先輩は土日は、パーティで潜るんですか?」


野村さんがわざとらしく、じ〜っと俺の目を見ている。

これは、あれだな。まあ俺も一人で一階層中心に潜る予定だったから別にいいんだけど。


「よかったら一緒に潜るか?」

「え〜本当にいいんですか〜? 迷惑じゃ無いですか〜?」

「いや、迷惑じゃ無いよ」


まあ、最初だけ見て放置して、これで何かあれば俺の責任だ。

流石にゴブリンを一体倒しただけの女の子を、明日から一人だけで二階層に潜らせるわけにはいかない。野村さんもその気ならちょうど良かった。


「それじゃあもしかして、またこのボウガンを貸してもらえたりしますか?」

「ああ、貸してあげるから使っていいよ」

「本当ですか〜? 助かります」

「だけど、稼いだら自分で買えよ。絶対に必要だからな。それとこれ安物だけどあげるよ。懐に入られた時に今のままだとやばいから」


俺はそう言って予備のナイフを渡した。

普通の量産品だが、ボウガンをメインにするとしても必ず、近接戦の機会はある。

ボウガンからハンマーでは間に合わないので、繋ぎですぐに手に取れる小型の武器は必須だろう。


「ありがとうございます。それじゃあ明日もよろしくお願いしま〜す」


真司と隼人の時はゴリ押しで無理やり連れ出されたけど、たまにはこうやって後輩をサポートするのも悪く無いかもしれないな。

家に帰ると今日はハンバーグカレーだった。

しかもハンバーグが今まで家で食べていたものよりも明らかに美味しい。

どう考えても素材の質が向上している。

日々俺の学費が消費されているのを実感するが、俺にもしっかり恩恵があるので文句は一切無い。

上質なハンバーグがのったカレーに文句などあるはずがない。

どちらも俺の好物であるカレーとハンバーグのコラボレーション。ハンバーグカレー最高だ。

夜になり一応春香に、明日明後日に野村さんと一緒にダンジョンに行く事を連絡入れると、すぐに春香から電話がかかって来た。


「海斗、野村さんとダンジョンに潜るんだね」

「ああ、このまま放っておくのも危ないから、それに彼女も結構大変みたいだから」


そう言って俺は、野村さんがダンジョンに潜ってお金を稼ぎたい理由を春香に説明した。


「そうなんだね。野村さん家族思いのいい子だね。だけど日曜日の海斗の誕生日はダメだからね。忘れてないよね」

「いや、一緒に潜るのは明日と明後日だけだからもちろん忘れてないよ」

「カオリンは今月いっぱいはリハビリでしょ」

「うん、そうだけど」

「じゃあ、やっぱり言っておいたほうがいいと思うから約束ね」

「本当に来週からは大丈夫なんだけどな〜」

「海斗は、多分野村さんを放っておけ無いと思うから」

「そんな事はないと思うけど」


一応、春香も野村さんと潜る事には賛同してくれたようだけど、妙な感じで信用されていない気がする。

だけど、再来週の日曜日は、春香の手料理か〜。こんなに楽しみな誕生日は初めてだ。

早く誕生日来ないかな〜。

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