第539話 病状

一階層で魔核を集める事が出来たので今日から遂に十七階層を探索する。


「おはよう」

「うん、おはよう」

「今日もいい春日和だな」

「あれ? カオリンはまだ来てないの?」

「それが、メッセージが届いて今週も休むって」

「え? 今週も休みなのか? それって大丈夫なの? もう二週間だぞ」

「私も心配なんだけど、電話は出ないし、メッセージでただの風邪だっていうからそれ以上は聞き辛くて」


いや、俺でも完全復活しているのにどう考えても長すぎる。


「俺カオリンのパパの連絡先知ってるからちょっと電話していいかな」

「うん、お願いね」

「それがいい」


俺は早速以前登録してあったカオリンのパパに電話をしたが、やはり緊張してしまう。


「はい、高木です。お久しぶりです。はい……カオリさんは…………はい。そうなんですか? はい………じゃあ教えてもらっていいですか? はい……待ってくださいね……じゃあ今から、はい」

「どうかしたの?」

「ああ、カオリンなんだけど入院してるって」

「え!?」

「どうしたんだ?」

「ボス戦から帰ってから俺と一緒で寝込んだみたいです。ただ、カオリンは元々身体が弱いのでかなり悪いみたいです」

「そんな……メッセージでは一言も」

「それで病院名を聞いたのか?」

「はい、今から行っていいですか?」


それからすぐに俺達三人はカオリンのパパから聞いた病院へと向かった。


「この部屋みたいです」

「じゃあ入りましょう」

『コンコン』

「はい、どうぞ」


中からはカオリンのママらしき人の声がして来た。

俺は病室のドアを開けて中に入るが、奥のベッドにカオリンを見つけて一瞬動きが止まってしまった。

カオリンは俺同様にベッドで寝ていたが、俺の時には無かった鼻にカニューレをつけて酸素吸入をしており、二週間前と比べて顔色が悪く明らかに痩せているのがわかった。

なんだ? なんでカオリンは……


「海斗さん……ミクさんとあいりさんも。パパが教えたんですね」


カオリンがベッドから声をかけてきたが、明らかに張りも無い。


「ああ、うん。心配で電話したら教えてくれたんだ」

「そうですか……ちょっと風邪をこじらせてしまって入院なのです。多分来週にはダンジョンに潜れると思います」

「…………」


素人の俺が見てもそれは嘘だと分かってしまう。それ程にカオリンは……


「カオリン、実は俺も入院してたんだ。3日間一歩も動けなくてミクに低級ポーション二本と中級ポーション一本買ってきてもらってようやく退院したんだ。多分カオリンより酷い状態だったかもしれない」

「そうそう、海斗はベッドに貼り付け状態でオムツしてたのよね」

「海斗それは初耳だがそうなのか?」

「ミク! みんなの前でそれを言う? ああ、そうです。その通りです。今時のオムツはすごいんです。最強ですよ」

「ふふっ……。海斗さん退院できて良かったですね」

「ああ、カオリンもすぐに退院出来るって。俺達も今は十六階層をまた探索してるからゆっくりでも全然大丈夫だけどな」

「早く十七階層に行ってみたいですね……」

「そんなのすぐだって。攻略だってあっという間だよ。みんなレベルアップして今までよりもパワーアップしてるから」

「そうですね」


その後しばらくカオリンと話していたが、余り長くなるのも良くないと思いそこそこの時間で切り上げる事にした。


「カオリン、それじゃあまた来るから」

「はい」


そう言って病室を出てから俺達三人は病院を後にしたが、病院を出るまで誰一人言葉を口にしなかったが、みんな分かっていた。

カオリンの身体の状態はかなり良くない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る