第488話 マジックポーションいきます

鬼烈の刀の作中にある鬼が首を落とせば消滅すると言う設定は実際のダンジョンから引用したのかもしれない。

だからこの階層の鬼も設定と同じく首を落とせば消滅するのではないだろうか。

俺達はその後もう1度鬼との戦闘に入ってからお昼ご飯を取る事にした。


「それじゃあ、ご飯にしようか。それと俺のMPがそろそろ不味いから低級マジックポーションも飲んどこうと思う」

「海斗さん、アドバイスです。ご飯の前に飲んでください」

「これって飲用は食前にとかってあったっけ」

「悪い事は言いません。ご飯の前がいいのです」

「そう……じゃあそうしようかな」


俺はマジック腹巻から低級マジックポーションを取り出して開封する。

マジックポーションは初めてなので、好奇心でテンションが上がる。

俺は瓶に口をつけて一気に飲み込む。


「グ、グハッ」


およそ俺の口から出たと思えないような声と共に咽せてしまう。

この味はなんだろうか。

漢方を極限まで煮詰めて、更にそこに苦味を加え、とどめとして刺激を足した様な味。

信じられない事に低級ポーションの比ではなく不味い。

これは毒なのか?そう思わせるような味だ。

これは決して興味本位で飲んではいけないものだ。

店員さんとカオリンの言っていたことが飲んで初めて理解出来た。

これは売れない………

ステータスを見るときっちりMPが50回復していたので効果は問題無いが、この味に耐えられる人はそう多くない気がする。


「海斗、大丈夫なの?」

「っ……………大丈夫じゃない」

「そんなに不味いの?」

「滅茶苦茶不味い」

「そう。私は機会があれば中級にしておくわ」

「うん、お金があればそれがいいと思う」


ただ庶民の俺にはこれしか選択肢は無い。

なんとか1本を飲み切ったが、今後後3本は飲まなければならない。

となると味変するしかないが、砂糖はおそらく意味がない。

これ程強烈で濃い味なので、砂糖を入れても本質的な味が変わるとは思えない。

であれば何かで割るか?

大人がお酒を飲む時にやってるソーダ割とかはどうだ?

飲み口が爽やかになったりしないだろうか?

この苦味と煮詰まり感が少しは薄まるだろうが、割った分だけ量が増える。しかも炭酸が胃を圧迫しそうだ。

試す価値は有るが望みは薄い気がする。

おそらくジュースで割るのも大差ないだろう。

それにしても不味さで舌が麻痺してしまいそうだ。


「海斗さん、早くご飯を食べましょう。それしか無いのです」


ああ、それで食前を勧めてくれたのか。

俺は買って来た焼きそばパンに急いで口をつける。


「なんて事だ!味が分からない…………」


舌がマジックポーションの味に浸食されてしまい、焼きそばパンの味がよく分からない。

鼻も麻痺しているのか、ソースの香りもよく分からない。

カオリンは口直しの意味で食前を勧めてくれたのだろうが、折角の昼飯が全く味わえない事を考えると寧ろ食後に飲んだ方が良かったんじゃないだろうか?


「カオリン、前飲んだ時はどのくらいで味覚が戻ったんだ?」

「およそ1時間です」

「そんなにか」


1時間も味覚がやられるのか。

この不味さで戦いにも影響が出てしまいそうなので、飲むとしたらお昼休憩のこの時間しか無いな。


「カオリンはその1回しか飲んだ事ないのか?」

「私は1回と言うよりも半分しか飲めなかったのです。それからはトラウマ気味です」

「全部飲みきれなかったのか」


以前低級ポーションの飲み過ぎの時も少し健康被害が頭をよぎったが、この低級マジックポーションもかなりのものだ。

良薬口に苦しなんて言う言葉もあるが、これは苦すぎる。

苦すぎて体に悪そうで、明日から飲むのが躊躇われてしまう。

取り敢えず明日はコーラで割ってみようと思う。

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