第486話16階層を進む

16階層を進んでいるが、午前中にマッピングが終わっている昨日の地点まで到達する事が出来た。

昨日同様小鬼も出現したのでシルとベルリアを中心に対応してもらっているがルシェは少しは反省したのか今日はここまで暴走はしていない。


「みんな、ここからは来た事の無いエリアだから敵にも気をつけて進もう」


見る限り昨日のエリアと比べてもフィールド的な変化は見て取れないので、注意を払いながらもどんどん進んでいく。

昨日はここまでで俺のMPが底をついてしまったが今日は、小鬼を相手にしていない事もあり、まだこのまま行けそうだ。


「ご主人様、この先に敵モンスター4体です」


4体か。この階層では今までで1番数が多い。


「俺とベルリア、あいりさんとシルで当たろう。残りのメンバーはフォローを頼む」


4体となると俺とあいりさんがそれぞれ1人で交戦する事になるので後ろからの援護は必須となる。


「ルシェも積極的に行ってくれ」

「そんな事言われなくてもわかってるって。まかせとけって」


まあルシェがやる気を出してくれれば問題無く進めるだろう。

俺達は臨戦態勢を整えて鬼退治に向かう。

前方に敵が見えて来たが、今まで出て来た事の無いタイプの鬼が4体。

サイズは4体共に大鬼と女鬼の間ぐらいなので結構大きめの人型だが、2体は腕が4本生えており、もう2体は服装が浴衣では無く袴姿なので、より侍のイメージに近い。


「シルとベルリアが4つ腕を頼む。俺とあいりさんで残りの2体を倒しましょう」


4つ腕の方は大小4本の刀を持っているので、何となく俺とあいりさんでは相性が悪い気がしてシル達に任せる。

ミクとカオリンの攻撃が合図となり4人ほぼ同時に敵に向かって駆けて行く。

カオリンの『アースウェイブ』が袴の鬼の1体を捕らえた。

ミクはスピットファイアによる火球を3連射して鬼3体を足止めするが、4つ腕は予想した通り4本の刀で火球を切り飛ばしてしまった。

やはりあの刀は伊達ではないらしい。

俺の相手は火球を前にして刀を持っていない左の拳での正拳突きで火球を消し去ってしまった。

ただの正拳突きのくせにふざけた威力だ。

しかも風か何かを纏っているのか、拳を痛めた様子が全くない。

俺は、相手の意識が火球に集中し、俺から視線が外れた瞬間ナイトブリンガーの効果を発動して気配を薄めながら距離を詰めて、そのまま『ドラグナー』の引き金を素早く引いた。

相手の能力がよく分からない以上速攻でけりをつけるのが最善手だ。

気配を薄めた状態から放たれた弾丸は蒼い糸を引いて一直線に鬼の頭を捉えた。

幸先良く鬼の頭を完全に撃ち抜く事ができたので、あいりさんともう1体に集中出来る。

鬼の頭を撃ち抜いたのを確認した俺は、駆けるスピードを緩めず、そのままあいりさんの後を追おうとするが、後ろからカオリンの声が聞こえて来た。


「海斗さん、まだです『ファイアボルト』」


え?

カオリンの『ファイアボルト』が俺の背後から先程倒したはずの鬼を捉えた。


「なんで……?」


俺が倒した筈の鬼が何故か消滅せずに俺に迫って攻撃をかけてこようとしていたのをカオリンの『ファイアボルト』が防いでくれていた。

この鬼は回復している……のか?頭を撃ち抜いたのに消滅する事無く動いている。

今までの鬼は回復能力は持っていなかった事を考えると、この鬼は特殊個体か上位個体なのかもしれない。

いずれにしても、完全に消滅するまで攻撃を続けるしかないが、頭への攻撃が致命傷にならないとすると心臓か?

俺は再び『ドラグナー』を構え直し、近距離から鬼の心臓に向けて引き金を引いた。

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