第484話 マジック腹巻き

俺はバルザードをマジック腹巻のポケット部分に差し込んでみる。


「おおおお〜入った」

「当たり前だろうが。剣ぐらいは入らね〜とマジックストレージとして使いもんにならんだろ〜が!」

「この鎧は入りますかね」

「は〜っ……入るわけね〜だろ。口の大きさよりでけ〜もんが入るわけね〜だろ。無理やり入れたら破れて使えなくなるから注意しろよ」

「はい」


順番の俺の荷物を入れてみたが、ナイトブリンガー以外は全て収納する事が出来たが、重さはほとんど感じない。

これがマジック腹巻。すごい……

薄汚れてはいるが間違い無く本物だ。

これで250万円なら間違いなく買いだ。

だがこのマジック腹巻から物を出し入れする姿は正に猫型ロボットのそれを彷彿とさせる。

ある意味無敵感が漂うが一般的な探索者がこのイメージを良しとするとは思えないのでこの価格なのかもしれない。

おっさんは俺が迷っていると勘違いしたのだろう


「坊主この腹巻の凄いところはな、サイズ調整がこんなに効くところだ。鎧の下につけても鎧の上からでも装着出来る優れものだ!少々汚れちゃいるが、消臭スプレーでなんとかなるだろ。ユーズドだよユーズド。ダメージデニムみたいでかっこいいだろうが!おまけにレアだぞレア。他の探索者と被らね〜傾奇者だぜ。しかも滅多に出ねえマジックストレージだぞ。250万はバーゲン価格だぞ!坊主の為に俺が買い取ったんだからな!」


いつになく早口で捲し立てて来る。どうしても売りたいという気持ちが伝わってくるが、こちらも元々欲しいと思っていたマジックストレージだ。まさにwin winの関係とはこの事だ。


「分かってますって買います」

「おお〜そうか。じゃあ取り扱いの注意だが間違っても洗濯機で洗ったりすんなよ。中が水浸しで使いもんにならなくなるぜ」


俺はその場で即決してマジック腹巻を購入した。

今まで荷物を背負いながらの戦闘だったので多少動きにも影響が出ていたと思う。

肩が凝ったりもしたがついに、ついに俺は探索者なら誰もが憧れるマジックストレージを手にする事が出来た。

しかも新品のマジックポーチが1000万という事を考えるとこのマジック腹巻の250万は格安だ。あのおっさんとは思えないほど良心価格だった。

一重に汚れと腹巻という斬新なスタイルのお陰でこの値段だったんだろう。

しかも俺の荷物を全部入れてもまだ余裕があるように見えるので殺虫剤等ももっと詰め込む事が可能になった。

凄い。なんて凄いんだ。しかも腹巻の利点は動きが全く阻害されない。

ただかなり汚れているので、念の為にアルコール消毒もしっかりとしておこうと思う。

以前の持ち主は引退したとの事なので結構年齢は上だったのかもしれないが、おっさんが肌身離さず身につけていたかと思うと少し嫌なので心の中では前オーナーは妙齢の美女だった事にしておこうと思う。

正直妙齢の美女がこの腹巻をしているイメージは全く湧かないが、俺は可能性に賭けようと思う。

マジックポーションにマジック腹巻で明日から俺の探索者ライフは劇的変化を迎える事になるだろう。

その後嬉しすぎてハイテンションで家に帰ると今日の晩ご飯はカレーだった。


「母さん、最近なんかカレーが多くない?」


最近晩ご飯のカレー比率が急激に高まっている気がする。


「え?嫌だった?じゃあ次はハヤシライスにするわね」

「ルーが違うだけで同じものじゃないか。もっと別のは無いの」

「そうね〜じゃあビーフシチューでどうかしら」

「それもほとんど一緒じゃない?」

「いやね〜カレーとシチューは別物よ」


それは俺だってカレーとシチューが違う物なのは分かるが、正直材料と作り方は一緒じゃないか。


「何でカレーとかシチューばっかりになったの?」

「それは、作るのが簡単で美味しいからよ。しかも2日いけたりもするでしょ」


これは堂々の家事サボタージュ宣言ではないのか?

まあ俺はカレーが好きなので問題はないが、普通の人は週に1回以上のペースでカレーが出て来たら流石に飽きるんじゃないだろうか。

しかも2日連続の場合があるので最近2週で3食以上のペースでカレーが出て来ている。

カレーは大好きだけどハヤシライスで変化をつけるのもいいかもしれない。

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