第469話 鬼鬼
俺は今16階層を進んでいる。
「かなり強かったけど他のパーティはどうしてるんだろう」
「まだ1体だから断定は出来ないが刀が武器なのであれば、距離をとって槍系もしくは遠距離から仕留めているのだろうな」
「私達は前衛の海斗とベルリアのメインウェポンが完全に近距離だから」
「重ね掛けで魔氷槍にすれば間合い的にはいけると思うけど、MP的に厳しいな」
「でも大きい割にジャンプしたりしていたので『アースウェイブ』で機動力を奪うのは有効なのではないでしょうか?」
「確かに重そうだし有効かもな。次同じのが出て来たら『アースウェイブ』を頼むよ」
「わかったのです。任せてください」
まだ16階層の探索は始まったばかりなので、マッピングを進めるべくどんどん進んでいく。
「海斗さん、春香さんってどんな方なのですか?」
「そうだな〜。正義感が強くて優しくて可愛くて俺のヒーローだよ」
「海斗さん………ベタ惚れなのですね」
「……っ、カオリンが聞くからだろ」
「正義感が強くて優しいってちょっと海斗さんっぽいですね」
「俺!?俺は春香とは全然違うよ。春香のようになりたいと思ってるだけだよ」
「そうなのですね。週末楽しみですね」
「俺はあんまり楽しみではないんだけど」
「そうなのですか?このパーティはちょっと恋バナが足りないので色々聞いてみたいのです」
「恋バナって……。春香にそれを聞くつもりなのか?俺じゃない相手が出て来たらショックで倒れるかも。出来たらやめてほしいな」
「ふふっ、私達に会いたいぐらいなので大丈夫じゃないですか?」
「そういうものかな。それより俺以外の3人でも恋バナとかしないのか?」
「無いですね。私はそういうのは無理ですし、ミクさんとあいりさんもそういう相手はいないようなので」
「そうなのか。3人とも凄くモテそうなのにな。カオリンも絶対に俺が薬を手に入れて見せるから恋愛にも積極的になってもいいと思うよ」
「流石超絶リア充は言う事が違いますね」
「カオリン………」
「冗談なのですよ。ありがとうございます。でもまだちょっと余裕がないのです」
「そうか」
「ご主人様、前方に敵モンスターです。今度は2体です」
今度は2体か。1体はシルかルシェに任せるか?
対策を考えていると今度は敵の方からこちらに向かって来たようで目視できる位置に敵影を確認する事が出来た。
どちらも先程の鬼と同様浴衣のようなものを着ている。1体は先程と同種のように見えるがもう1体は比較するとかなり小さく見える。
対象が大きすぎるので小さく見えるが俺と同じぐらいの大きさだろうか?
浴衣の感じが女性物の様にも見えるので性別で言うと女なのかもしれない。
『アースウェイブ』
俺が敵を目視するのとほぼ同時に事前の打ち合わせ通りカオリンが魔法を発動した。
狙い通り大きい方の鬼、大鬼は突然足元がぬかるんだ事に対応出来ずに足を取られている。
『アースウェイブ』
カオリンが続け様に魔法を放ち今度は小さい方の鬼、女鬼の足元にも発動したのが見えたが女鬼は瞬時にその場を移動して難を逃れた様だ。
動きは一瞬だったが、かなり素早い。
「ベルリア、あいりさん、大きい方を頼みます。小さい方は俺がやります。ミク、スナッチ援護を頼んだ」
足を取られた今の状態の大鬼であればベルリアとあいりさんの2人で十分仕留められるはずだ。
逆に女鬼の方はあのスピードではシル達の魔法も狙いをつけ辛いので俺が対応するのが適任だろう。
俺は『アサシン』の効果にも期待して『ナイトブリンガー』の効果を発動してから女鬼の方に向かって駆けた。
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