第467話 16階層の敵
「敵が出てこないな」
16階層を進み始めてから既に20分程が経過しているが未だ1体の敵も出現していない。
15階層と比較して気温や地形に大きな違いは見て取れないので比較的進み易い。
「この階層の情報って入ってるの?」
「色々当たっては見ましたが、分かったのは鬼がいると言う事ぐらいなのです」
「鬼?オーガか?」
「オーガの上位種がいるのかもしれないわね」
最近オーガと戦う事は無くなったが元々オーガ自体が結構強いモンスターなので気を抜くことは出来ない。
以前も弓を使った攻撃を仕掛けて来たので遠距離攻撃にも注意した方が良さそうだ。
「ご主人様、敵モンスターですが1体だけのようです。ご注意下さい」
「16階層で初めてのモンスターだからどんなモンスターか様子を見たいな。とりあえずシルは『鉄壁の乙女』を。ルシェは待機。あいりさんとベルリアが前で俺がすぐ後ろに付きます」
折角敵が1体なのにシルとルシェが速攻で倒してしまうと16階層の敵の特徴や能力が分からないので、2人は控えさせて戦いに臨む。
前方に進んでいくとすぐに敵が目に入って来た。
敵は人型だがかなり大きい。2Mは超えている様に見える。
「鬼だな」
「鬼ですね」
敵モンスターは一目で鬼と分かる1本角が頭部に生えているが問題はその格好だ。
通常のオーガとは違い服を着ている。
着物?いや浴衣か?
正直着物の種類の区別はよく分からないがとにかく、和装っぽいのを着ている。
しかも手に持つ武器は刀だった。
その姿は侍を彷彿させるが、この風貌なのである程度以上の知能があるのは間違いなさそうだ。
「ベルリア、あいりさん行きますよ」
俺達3人は前に向かって駆ける。
牽制の意味を込めて鬼に向かってバルザードの斬撃を飛ばすが、俺が剣を振るったのに合わせるように鬼も手に持つ刀を振るって来た。
『パシュッ』
直後に聞き慣れない炸裂音がして何も起こらなかった。
何も起こらなかったが起こらなかった事が問題だ。
バルザードの飛ばした斬撃が消えてしまった?
本来であれば着弾すべき斬撃が着弾しなかった。
まさかだが、相殺されたのか?
見えないはずの飛ぶ斬撃を刀の斬撃を飛ばして相殺したとしか思えない。
「ベルリア、あいりさん、多分あいつ斬撃を飛ばせるみたいです。注意してください。ミク、刀を振るわすな!」
俺はベルリアとあいりさんに注意喚起をして、ミクに援護を促したが連射の効くミクのスピットファイアが有効だと思ったからだ。
ミクも意図を汲んでくれて、すぐに後方から火球が飛んで来たが、鬼が先程と同じように刀を振るうと火球が真っ二つに割れた。
割れた火球は勢いを削がれたものの左右に別れてそのまま鬼の両肩に命中した。
命中してもそれ程ダメージがあるようには無いが浴衣が焦げて穴が空いているので火傷ぐらいはしたんじゃ無いだろうか。
それにしても俺はこれと同じ様な情景を見た事がある。
以前ベルリアが敵の火球を斬った時とほぼ同じ状態だ。
この鬼も風貌と武器を見る限り剣に自信があるのだろうが、剣に頼る脳筋は同じ行動に出て同じ結果を生むのかもしれない。
姿形こそ違えど、ベルリアと同じ匂いがする。
「ミク、効いてるぞ!続けて頼んだ」
続けて数発の火球が鬼に向かって飛んで行ったが、1発目は先程と全く同じ結末を辿り、鬼にもダメージを与える事が出来たが、流石に学習した様でその後の火球は斬ると同時に巨体を揺らして回避していた。
4発目を回避されたタイミングでベルリアとあいりさんが鬼に接近して間合いに入った。
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