第431話 ラッターランド

俺は昨日買ったピンクのパーカーにジョガーパンツを履いている。

朝服を着て鏡を見たが正直違和感しか無かった。


「海斗おはよう。服良い感じだね」

「そ、そうかな。自分ではよく分からないんだけど」

「オシャレな感じに見えていいと思うよ」

「それなら良かったけど。春香も良い感じだよ」


春香は昨日のパンツルックから一転して水色のワンピースだ。

パンツルックも新鮮で良かったがワンピースも素晴らしい。

目の前に春の風を運んでくる天使が立っている。

天使といえばルシールも天使だが方向性が違いすぎるので同じ天使でも比較のしようはない。

昨日は映画と俺の買い物をして帰ったが、今日は1日テーマパークに行く予定だ。

今日行くのは恐らく日本で1番人気のあるテーマパークのラッターランドだ。

俺も小学生の時に遠足で行ったことはあるがそれ以来となるラッターランド。

夢の国との触れ込みだが、彼女も友達もいなかった俺には全く縁の無い場所だった

世の中には1人で来るのを楽しみにしている強者もいるとネットで見た事があるが、特にラッターに興味の無い俺が1人で訪れた場合は、悪夢しか見ない気がする。


「春香はラッターランドは何度か来てるの?」

「うん、パパとママとも来たことあるし、友達とも何度か来たことあるよ」

「俺は1回しか来たことないから乗りたい乗り物があったら言ってよ。任せるから」

「うん。私はね〜ジェットコースターとかライド系の乗り物が好きなんだけど海斗は大丈夫?」

「ああ、任せといてよ。なんでも大丈夫だよ」

「それと今日の入園料は俺が払うから」

「えっ?良いよ私もお金持って来てるし」

「昨日服を選んでもらったお礼だから気にしないでよ」

「う〜ん、じゃあお願いします。ありがとう」


このラッターランドだが事前に調べた所小学生で来た時よりも随分値上がりしており、普通の高校生ならお小遣い1ヶ月分ぐらいはかかってしまう。

俺が誘ったのだから俺が払うのは当然だろう。

電車で移動して1時間程でラッターランドに着いたがオープン前にも係らず既に100人単位の人が行列を為している。


「すごいな……」

「日曜日だからね。やっぱり人は多いよ」


遠足の時も人は多かった印象はあったが、あれは平日だったのでこんなに並んでいるイメージは無かった。

正直甘く見ていたかもしれないと思いながらチケットを買う為に列に並んだ。

なんとチケットを買うだけで25分も並んでしまったが春香も一緒に並んでくれたので全く苦にはならなかった。ただ今度は入園の為の列に並ぶ事になった。


「俺、普段並ぶ事とかないからビックリだよ」

「やっぱり、ここは特別じゃないかな」

「並ぶの大丈夫だった?」

「海斗、こういう所は並ぶ事も楽しみの1つでしょ」

「ああ、そんなもんかな」

「うん、焦っても進む訳じゃないしゆっくり待つのが良いよ」


春香は達観してるな〜。春香がいるから今の俺には待っている時間も楽しみでしかないが、1人であれば絶対に無理だ。修行いや苦行でしかない。

周りに並んでいる人達に目をやると日曜日だけあって小さい子供を連れた親子連れが目立つが、やはりカップルと思しき人達も多い。それに思いの外女の子だけのグループもいるようだ。

このテーマパークはラッターという野ネズミをモチーフとしたキャラクターをメインに色々なキャラクターを

配置した乗り物が売りとなっているが、全世代に人気があるそうだ。

小学生の時に来た時よりも乗り物も新たに増えているようなので楽しみだが、よく考えてみると余り遊園地の乗り物に乗った記憶が無い。

恐らく俺の両親はそれほど遊園地が好きでは無かったのだと思うが、ラッターランドにも両親と来た記憶が無い。

普通に動物園とかには連れて行ってくれていたのに今考えると不思議なものだ。



あとがき

皆様のおかげでモブから始まる探索英雄がコミック売り上げ週間ランキングBEST500に2週連続でランクイン中です!

ありがとうございます。

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