第375話 アシスト

俺は今学校にいる。

学年末テストも近いのでいつも以上に集中して授業に臨んでいる。

そしてこの日の昼休みに、真司から衝撃的な話を聞かされる事となる。


「海斗、話があるんだ」

「なんだよ改まって」

「実はな、俺前澤さんとお付き合いする事になった」

「…………え?付き合うってあの付き合うだよな?友達からじゃなかったっけ」

「そう。だから友達から始めて、めでたく付き合う事になった」

「おお〜やったな」


なんと真司が前澤さんと付き合うようになったらしい。

あれだけ微妙な感じだったので心配していたのに急だな。


「だけどなんで急に付き合う事になったんだ?」

「指輪だよ、指輪。話してただろ。俺も隼人について行ってもらって、お返しに指輪買ったんだよ」

「あれだけ、うだうだ言ってたのに結局買いに行ったのか」

「そう。買ってから思い切って前澤さんに渡したんだ。そしたら物凄く喜んでくれて、付き合う事になったんだ」

「そうか〜。よかったな」


今までのやり取りを見ていただけに真司がうまくいったのは純粋に嬉しい。

遂に俺達3人の中から彼女持ちが出たかと思うと感慨もひとしおだ。

ただそれと同時に…………うらやましい…………

真司が前澤さんに告白してから、まだどれ程の時間も経っていない気がする。


「前澤さん、葛城さんが海斗から指輪をもらったの知ってて羨ましかったんだって。今までホワイトデーには自分はお菓子しかもらった事が無かったのに、海斗が葛城さんに指輪をプレゼントしているのを知って軽く衝撃を受けたんだそうだ。そしたら俺が前澤さんに指輪を贈ったもんだから感激してくれて。そのままの流れで付き合う事になったんだ。最後の一押しになったみたいだ。海斗のおかげだよ」

「そうなんだ。よかったな」


ある意味俺がアシストした感じなのか?

俺は真司にアシストしてシュートを決めたのは真司って事か………

サッカーの試合だとアシストもシュート同様に評価されるんだろうが、恋愛の世界ではシュートを決めた者だけが評価をされる。


「く〜っ。俺だけ誰もいないんだけどどうすれば良いと思う?やっぱり紹介頼んでくれ!2人共合コンをセッティングしてもらってくれ。トリプルデートだよ。カラオケ今から練習しておくから、な!」

「いや、俺も真司に先を越された形だし、合コンなんか行った事無いんだけど」

「あ〜、海斗お前は良いんだよ。今のままでも大丈夫だ。多分クラスの女の子達の間では指輪の事は既に全員に広がってるんだからな」

「なっ!なんで……」

「そりゃ、葛城さんは言いふらしたりするタイプじゃ無いけど女子高生ネットワークに扉をつける事は出来ないでしょ。もう既に伝説というか既成事実というか、2人は結婚するんだってもっぱらの噂だぞ」

「け、けっこん?付き合っても無いのにけっこんって…………」

「そりゃあ、ホワイトデーに左手の薬指に指輪を贈ってりゃあな〜」

「で、でもな考えてみてくれよ。けっこんて言うのはな1人では出来ないんだぞ、相手がいないと出来ないんだぞ」

「なにを当たり前の事を言ってるんだ。海斗大丈夫か?」


俺のやらかしからまだどれだけも日が経っていないのに、噂が一人歩きして大きくなってしまっている。

これも75日の我慢というか3年生になったらおさまるだろうか。

いつか春香と付き合って将来的にそうなれば最高だとは思うが、今の俺には夢物語にしか聞こえない。

いずれにしても真司おめでとう。

これから前澤さんに振られない様に一層の努力が求めらるのだろう。

頑張れ!


あとがき

あけましておめでとうございます。

今年もモブから始まる探索英雄譚をよろしくお願いします。

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