第372話 黒い彗星はイケメン?

俺は今学校に来ている。


「海斗、土曜日って何してたんだ?」

「え、土曜日はいつもの通りダンジョンに潜ってたけど、それがどうかしたか?」

「海斗って今何階層に潜ってるんだ?」

「今14階層だけど」

「やっぱりそうか」

「やっぱりってなんだよ」

「いや、昨日サークルの情報ラインで一気に回ったんだよ」

「なにが?」


この話し方、この展開、以前もあった気がするが、悪い予感しかしない。


「黒い彗星が超絶イケメンだって」

「ふぁっ!?」


俺の思ってたのとはかけ離れた答えに変な声が出てしまった。一体なんの話だ?俺が超絶イケメンってなんだ?


「海斗、土曜日に襲われてたパーティを助けなかったか?」

「ああ、ホブゴブリンの群れに襲われてた6人組は助けたけど」

「やっぱりか。その人達がサークルのネットワークに事の顛末を上げて黒い彗星は超絶イケメンだ!最高の男だって上げてるんだ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。確かに助けはしたけど俺、名乗って無いんだけどなんで俺って特定されてるんだよ」

「相手のパーティは全員が、一目見た時からわかってたみたいだぞ」

「なんで………」

「第一に幼女や幼児を連れた女性中心のリア充パーティだった事。そして海斗の装備。黒い鎧に黒いマントですぐに分かったらしい」

「…………………」

「まあ、俺達のダンジョンでその特徴のパーティって海斗のところだけぐらいだろ」

「……………そうか」


あの時はさっさと切り上げたので身バレするような事は一切無いと思ったのに、全員に一瞬でバレてたなんて複雑だ。


「それで、颯爽と助けてくれた上に、名乗りもせず、お礼をしようとしても受け取らず、あっという間に去っていったそうだ」

「まあ、大体はあってるけど、それがなんで……」

「いや、普通そんな事されたら惚れるだろ!」

「なにを…………」

「海斗、お前の天然は葛城さんだけに発動する特殊スキルなのかと思っていたら、そうじゃなかったんだな。カッコよすぎだろ」


こいつら一体何を言ってるんだ?この話しのどこにイケメン要素があるんだ?


「それで、どうなってるんだ?何でお前達まで伝わってるんだよ」

「それが、掲示板は黒い彗星ネタで盛り上がってるんだ。今1番ホットな話題だな」

「うそだろ………」

「本当だって。やっぱり黒い彗星は違うなとか、羊の皮をかぶった虎だったとか。まあとにかく今超絶イケメンって事になってるんだ」


羊の皮をかぶった虎…………例えがよく分からないが、超絶リア充というガセが出回ったと思ったら今度は超絶イケメン?どれだけガセが出回れば気が済むのだろう。

以前人の噂も75日だと思っていたが、どう考えても75日でおさまった気がしない。

それにしても、あのパーティメンバーは一体何を見ていたのだろうか?

6人もいたのに全員が吊り橋効果で俺の顔に超補正が入って見えたのだろうか。

いずれにしても、自他共に認めるモブ顔なのに超絶イケメンなどとあらぬ噂が立つと、何故か俺が悪い事をしたかのような罪悪感に似た感情を覚えてしまう。

行った事は無いが、コンパに行く前に散々情報でイケメンだと吹聴されていた奴が実際に登場した時にモブ顔だった時の周りのがっかり感。想像するだけで恐ろしい。


「なあ、俺これからどうしたらいいと思う」

「別にどうもしないだろ。事実なんだから堂々としてろよ」

「そうだぞ、超絶リア充で超絶イケメンすごいじゃないか。まあ世の中には雰囲気イケメンとか行動イケメンとかいるから海斗も十分ありだろ」


いや、どう考えても無しだろ。何か久しぶりにキリキリと胃が痛くなって来た。

言ってる分には面白いかもしれないが、俺の探索者人生に関わる事のような気がして気が重い………

まあメンバーがどうにかしてくれる事を期待してまたダンジョンに潜ろうと思う。


あとがき

年末のお供にHJ文庫モブから始まる探索英雄譚3をよろしくお願いします。

ニコニコ静画にコミック最新話掲載中です。

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