第362話 運命の調べ
「それで、香織自身も自分で薬を見つけ出しで、自分の運命を変えて見せると行ってダンジョンに通い始めたんですが、最初の頃は思ってた程上手くいって無かった様なのですが、ある時期を境に香織の態度が明るくなりまして、聞いてみるとパーティを組んだんだと言うんです」
カオリンがダンジョンに潜っていた理由が分かった。
自分の病気を治す為にエリクサーやソーマ、ネクターのいずれかをダンジョンで手に入れようとしていたようだ。
そもそも手に入れたと言う話自体が聞こえて来ないレアアイテムなので普通に考えてソロで潜る事の出来る浅い階層で見つかるとも思えない。
カオリンにとってパーティを組む事は文字通り死活問題だったのだろう。
今の所パーティでの探索は上手くいっているのでカオリンが明るくなったのもうなずける。
「多分僕達とパーティを組んだからなんですね」
「そうです。あの子に聞いたら楽しそうにダンジョンでの出来事を話してくれるんです。パーティの方の話や敵を倒した話とかもです。あの子が皆さんを信頼しているのがすぐに見て取れました」
「そうですか。それはよかったです」
「ただあの子の時間が少しずつ少なくなっているのは変わりの無い事実なので、厚かましいお願いなのですが、どうかエリクサーを見つけて頂けないでしょうか?お金は出来る限りお支払いしますので娘に使わせてやってもらえないでしょうか?私にはもうこれしか手段が無いんです」
ああ、そう言うことか。
カオリンのパパはのお願いは俺達にカオリンの病気を根治させる薬を見つけて欲しいと言う事だった。
パパの表情を見ても、カオリンが探索者になってから経過した時間を考えても、もうこれしか手段が無いと思ったのだろう。
「大丈夫です。頭を上げてください。エリクサーかネクターかは分かりませんが、絶対に見つけるんで安心して下さい」
「ありがとうございます。重ねて厚かましいお願いなのですが、香織が探索者でいられる時間的な余裕は後1〜2年しか無いと思うのでそれまでに何とかお願いします」
「大丈夫です。任せてください。これも決まってたことだと思うので」
初めは、カオリンの事で衝撃を受けたがパパと話しているうちに自分の中で話の内容がスーッと入ってきた。
先週因果律の話が出て来てミクからメンバー全員が同じ因果律の中にいるのだと言われた。
つまりはそう言う事だ。
カオリンがKー12のメンバーになった事も偶然では無いと言う事だ。
俺の何かをなす事の中にカオリンの薬をダンジョンで見つける事も当然含まれている。
そうでなければカオリンが俺の将来の事に関係してくるはずがないのだ。
カオリンの薬を俺が見つけてカオリンは未来でも探索者を続けている。そして俺と一緒に何かをなす。
先週までは、因果律と言う話にどこか半信半疑なところがあったが、今はもう確定事項でしか無いと思えた。
このタイミングでパパが俺に相談して来たのも偶然では無いのだろう。
「決まっていた事と言うのは、どう言う意味でしょうか?」
「あ〜ちょっと説明し辛いんですけど、絶対に香織さんは大丈夫なので安心してください」
「………本当にありがとうございます。高木さんは優しいですね。限りなく可能性が低い事は理解しているのですが、そう言っていただけると………うう、ううっ」
無理もない。パパの気持ちを考えると俺の大丈夫ですは、ベルリア並みに根拠の無い自信に見えるだろう。
だが本当に大丈夫だ。絶対にカオリンは助かる。俺が助けてみせる。
「もしも薬が見つかった時にはお金は用意出来るだけお支払いします。足りなければ家を売ってでも何とかします」
「あ〜。俺の分は大丈夫です。他にも2人いるので勝手に返事はできないですけど、多分他の2人もお金は大丈夫だと思いますよ」
「いや、でも」
「香織さんは俺達のパーティメンバーですから。この先もいて貰わないと困るんですよ。だからお金は大丈夫です」
パパの必死さは十分に伝わってきたので後は俺達が頑張るだけだ。
時間が限られているのは分かったが、今のまま進んでいけば必ず薬は手に入るだろう。
俺はこの時、カオリンと俺を引き合わせてくれた、得体の知れない因果律と言う運命の様なものに心の底から感謝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます