第348話 相談

俺は今パーティメンバーとお茶をしている。

こうしてダンジョン以外の場所でメンバーと食事するのは初めてだ。


「ところで、大事な話って何?」

「まあ、そう焦らずにゆっくり飲んでよ。俺の奢りだから」


メンバー全員を呼び出したものの切り出し難い。

メンバーが離れて行く覚悟は昨日のうちに出来ているが、いざとなると言葉が出ない。


「海斗さん、遂にふられたのですか?」

「いや違うよ」


カオリンが的外れな事を聞いてくる。

この微妙な空気が辛いので思い切って切り出してみる。


「みんな因果律って知ってる?」

「一応意味はわかるが突然だな。それがどうしたんだ?」

「昨日ダンジョンに潜ってる時にシルと話してたんだけど、因果律っていう言葉が出てきて」

「それって運命論的な話?」

「う〜ん。運命というか、この前も悪魔に襲われただろ。それで真司達にも聞いてみたんだけど探索者のサークルみたいなネットワークがあって、そこでも他の探索者が悪魔に遭遇したって言うのを聞いたことが無いって言われて」

「まあ、悪魔に襲われるのなんか私も余り聞いた事は無いけど」

「そうそれでシルに聞いてみたんだけど、物事には原因があって今回の原因は俺だって言われたんだ」


遂に本題を切り出す事が出来た。


「海斗が原因?どういう事よ」

「何か俺が悪魔とかイレギュラーを引き寄せてるって言うか、俺にもよく分からないんだけど、将来何か起こるのかも知れないそうだ」

「何かって何?」

「シルにもそれはわからないらしいんだけど、ルシェは俺が将来モブ神様の使徒になるんじゃ無いかって」

「モブ神様の使徒………」


そう言った瞬間にみんなの視線がカオリンに集中して、カオリンが気まずそうに俺から視線を逸らした。


「あ、あれは、ほんの冗談です。海斗さんの事で盛り上がってつい………」


俺の事で盛り上がってモブ神様……一体どんな会話だったんだ。


「正直、使徒になる事は無いと思うけど、とにかく俺が将来何かなすために、シルとかルシェが一緒にいて、何故かイレギュラーや悪魔にも遭遇する頻度が高くなっていると言う話らしい」

「そんな事あるの?偶然じゃ無いの?終わってみての結果論じゃ無い?悪魔を引き寄せるってどんな体質なのよ」

「そう言われても俺も別に身体に星が刻まれたりしたわけでも無いし実感は何も無いんだけど」

「まあ、仮に海斗がそういう特異体質だったとしてどうするのよ」

「いやそれなんだけど、俺は今まで通りダンジョンに潜る事はやめれないけど、みんなはそうじゃ無いだろ。俺が巻き込んでるんだとしたら他の選択肢もあるんじゃ無いかと思って」

「他の選択肢って何よ」

「いや、だから俺と一緒にいるとこれからも悪魔とかに会いやすくなるかもしれないだろ。それなら俺がいなければみんなは大丈夫なんじゃ無いかと思うんだ」

「それって海斗がパーティ抜けるって言う事?抜けたいの?」

「抜けたくは無いけどみんなに迷惑はかけれない………」


俺だって折角ここまでこのメンバーでやって来たんだから抜けたくなんか無い。だけど悪魔やイレギュラーと会いやすい原因が俺に有るとすれば俺が抜ける以外に選択肢は無いように思える。


「ちょっといい?」


ミクが他の2人と席を移動して話し込み始めた。

結構長い事話している。今後どうするか相談しているのだろう。前衛が1人抜けるのでどこかで見つける必要があるのだからすぐには決めれないのかもしれない。

10分ほど待っていると3人が戻って来た。


「いくつか確認させて」

「はいどうぞ」

「海斗はこれからもダンジョンに潜るのよね」

「はい」

「パーティを抜けたくて言ってるんじゃ無いのよね」

「はい、違います」

「悪魔とかを呼び込んで私達に迷惑がかかるのを恐れて言ってるのよね」

「そうです」

「わかったわ。3人で話し合ったんだけど、しっかり聞いてよね」


遂にパーティ解散の時が来てしまった。パーティを組んだこの半年ぐらい本当に楽しかったな。本当はもう少しこのメンバーで続けたかった。


あとがき

HJ文庫モブから始まる探索英雄譚3が本日発売となりました!

書店新刊コーナー、WEBショップで是非買ってください。

皆さんが買ってくれると4巻が出ます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る