第324話 食人植物


俺は今13階層を進んでいる。


順調に先を急いでいるが、今日はシルとルシェがいつもよりはりきっているので他のメンバーの出番が少し少なめだ。


同じサーバントのベルリアは全くと言っていいほど活躍していない。


シルとルシェの活躍により探索のペースは上がっているが、魔核を消費のペースも上がっているので良い事ばかりでは無い。


この階層で出て来るモンスターは全て植物に関するモンスターだが、植物の性質なのか、ある程度同じようなモンスターが続けて出てくる事が多いようだ。


俺達はボーナスステージかと思うようなマンドラゴラを退けてさらに進んで行く。




「ご主人様、モンスターですが1体だけのようです」


「マイロード私も戦わせてください。お願いします」


「そうだな。ベルリアもそろそろ頑張れよ」


「はい、頑張ります」




ベルリアの存在が薄くなってきているのを本人も察知したのだろう。


今回はサーバントの3人で頑張ってもらおうと思うが、モンスター1体のようなのでベルリアだけで十分かもしれない。


暫く進むと、奥には今まで見た事のないモンスターがいた。


見た感じ木ではなく草系だとは思うがかなり大きい。


本体から絡み合った蔓が首のように複数伸びており、その先端には頭を思わせる大きな葉がついている。


その風貌はさながら植物製のヒュドラの様に見える。




「結構凄そうなんだけど、俺も手伝おうか?」


「いえ大丈夫です。私に任せてください。姫様達も見ていて下さい」




ベルリアからいつもの任せてくださいが返ってきたので、いつでも行けるように準備はしておく。


ベルリアが正面から突っ込んで行くが、ベルリアを目掛けて頭の葉の部分が一斉に襲いかかってくる。


複数の頭の部分の葉が口のように大きく開き噛みつこうとしている。


葉が噛みつくというのも変な感じだが開いた葉の先端部分にはギザギザの歯を思わせる物がびっしりと生えており、完全なる噛みつき攻撃をかけてくる。


スピードはそこまで速く無いのでベルリアが2刀を使い避けながら対処しているが、数が多い。


頭の部分だけで6個が同時に襲いかかってきている。


6個の同時攻撃を躱しているベルリアも流石だが、噛みつき攻撃の対応に追われて本体に攻撃をかけるまでは至っていない。


しばらくベルリアとの攻防を観察していたが、よくみると葉の口部分からよだれのように液体が滴って来ている。


滴った地面を見ると僅かに煙が上がっているように見えるので、恐らく強力な酸なのだろう。




「ベルリア、溶解液に気をつけろ!触れると溶けるぞ」




俺がアドバイスするまでもないかもしれないが、至近で対応していると結構見えない物なので声をかけておいた。


ただし6つの攻撃に対処しながら更に溶解液にまで対応するのは容易では無い気がする。


ベルリアが『アクセルブースト』を使い首の部分から頭を落とすが、直ぐに蔓の部分が伸びて再生してしまった。




「シル、ルシェ頼んだ!」




「任せてください」


「わかってるよ」


「ベルリア下がりなさい。一気に決めますよ『神の雷撃』」


「ベルリア燃えないように気を付けろよ。『破滅の獄炎』」




シルとルシェが攻撃をかける。


ルシェの獄炎が頭の部分を焼き払いシルの雷が本体を消滅させてしまった。


2人の火力は流石だが、今回のモンスターは13階層の中でも強敵だったと思う。


ベルリアだけでは倒せ無かった。倒す為には最低でも2人がかりで臨む必要がありそうだ。


この階層でソロの探索者がいるのかどうか分からないが、いるとしたら相当な実力がないと無理だと思う。


もちろん俺には無理だ。




「ベルリア、結構手強かったな」


「いえ、大丈夫です。姫達もありがとうございます。もう少し時間をもらえれば私1人でも倒せたのですが」




ベルリア……


どう考えても時間の問題じゃなかっただろ。


2刀どころか4刀ぐらい無いと無理だったぞ。


今回はベルリアの負けず嫌いを再確認させられた一戦となった。

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