第322話 相談

俺は今2階層でゴブリンを倒している。

元々1階層でスライムを倒す予定だったが、学校で真司から相談に乗って欲しいと言われたので、2人でダンジョンに来ている。

俺は1階層でもよかったのだが、真司がスライムはもう大丈夫と言うので2階層でゴブリンを狩る事にした。

久々のゴブリン退治だがゴブリンスレイヤー(微)の効果とレベル20のステータスのおかげで、ゴブリンは全く問題にならなかった。


「海斗、実はな前澤さんとこの前カフェに行ったんだけど」

「あ〜そう言えば行くって言ってたな」

「それで今度はオレンジピールのブラマンジェを食べたんだ」

「どうだった?」

「ああ、すごく美味かった。フランボワーズのタルトより甘さ控えめで」

「やっぱりそうだよな。何で女の子はフランボワーズのタルトが良いんだろうな。どう考えても甘すぎるよな」

「それでな、ブラマンジェは美味しかったんだけど、俺は………」

「どうしたんだ?」

「ほとんど喋る事が出来なかった」

「何で喋れなかったんだ?」

「それが2人きりだと席も目の前だし緊張しちゃったんだ。それによく考えると共通の話題が無くて何も思いつかなかった」

「それじゃあずっと無言だったのか」

「無言では無いけど、盛り上がりはしなかった」


前回4人の時も俺が結構喋って真司は余り喋ってはいなかったからな〜。

前澤さんと2人きりになったら喋れないのも無理は無い気がする。

前方からゴブリンが現れたので真司が槌で思いっきり横殴りにぶっ倒して終わった。


「ふ〜。海斗は葛城さんといつも何を話してるんだ?」

「俺?俺の場合は、春香とは10年来の付き合いだからな〜。もちろん全然話して無い期間も長かったんだけど、全く知らないわけじゃ無いし、昔の話をしても共通の事も多いしな〜。最初は緊張したけどその後は割合スムーズに喋れたよ。春香も結構喋りかけてくれるしな」

「そうか、それじゃあ参考にならないかな。前澤さんもそんなにいっぱい喋る方じゃ無いんだよ」

「趣味の話とかしてみたか?」

「いや俺もあんまり趣味とか無いしな〜」

「折角だからダンジョンとか探索者の話をしてみるのはどうだ?それだったら結構話す事あるんじゃないか?」

「女の子にダンジョンの話なんかして引かれたりしないかな」

「春香には時々聞かれたりするけど別に引かれては無いぞ」

「そうか〜。もっと話すネタがあれば良かったな」

「俺もカフェはハードル高かったからな。今度は映画と買い物行ってみたらどうだ?俺はカフェよりはそっちの方がスムーズだった気がする」

「映画か。そうだな今度は映画に誘ってみるよ」


その後2階層では珍しく他のパーティに遭遇した。まだレベルが低いようで連携でゴブリンを倒して2人で大喜びをしていた。俺達と同じぐらいの男女のパーティだったが、喜び方を見ても抱き合って喜んでいたので完全に付き合っているのだろう。

最近俺も女の子達とパーティを組んだりプライベートで春香と買い物に行ったりしているので、以前のように殺意までは覚えなかったが、やはり羨ましい。


「いいな〜。ああ言うの憧れるな〜」

「真司も前澤さんと潜ればいいんじゃ無いか?」

「いや、怪我でもさせたら一大事だし、緊張してやらかしてしまいそうだから俺には無理だ」

「そうだよな。俺もパーティメンバーが怪我したりすると気が動転したりするしな。恋人同士で潜ってる奴らってどれだけ精神力が強靱なんだろうな」

「多分、俺達とは精神構造が全く違うと思う。ゴブリン倒して抱き合うなんか間違っても出来ないな。まだ隼人と抱き合った方が現実的だよ」

「まあそれはそれで微妙だけどな」


その後も2人でゴブリンを倒して回ったが、やはり俺達にとっては女の子との付き合い方は中々に難しいようだ。ダンジョンではレアになれたが地上ではまだまだモブのようなので努力が必要だ。


あとがき

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