第289話 敵の音
俺は今12階層を進んでいる。
久々に12階層に潜っているが、数回戦闘を繰り返しているうちに大分感覚を取り戻してきた。
取り戻したと言っても俺はあまり活躍できていないが、とにかくスナッチが頑張ってくれているので、主な攻撃はスナッチに任せてスナッチが攻撃を受けないように俺とベルリアで防御するやり方を確立した。
この分業制を敷いてからは劇的にネズミや蜥蜴を退治するペースが上がった。
一角コウモリやドリルモグラについてはスナッチだけでは対処できないので、シルやルシェの力も借りている。
「結構先の方まで進んできてると思うんだけど、みんな大丈夫かな」
「全然大丈夫よ。スナッチとシル様とルシェ様ばっかり活躍してるから私達はそれ程疲れてないわ」
「暗いのはそろそろ卒業したいので、早く進みたいのです」
「ここは私の出番はあまりないので大丈夫だ」
「それじゃあ、このままのペースで一気に進みますよ」
早くこの階層を抜けないと今の戦闘スタイルではパーティメンバーへの経験値もあまり入りそうにないのでとにかく13階層を目指す。
理想を言えばゲートのある15階層まで早く行ってしまいたい。
階層型のこのダンジョンでは一足飛びに先の階に行く事はできないのでその意味では遠征先のダンジョンの方が苦手なエリアを回避出来、効率がいいかもしれない。
ただ平面ダンジョンは調子に乗って進み過ぎる可能性があるのでそこは自制が必要だとは思う。
「ご主人様、敵モンスターです。反応が小さすぎて数がわかりません」
今までシルがこんな事を言ってきた事はない。今までとは違うモンスターの可能性が高い。しかも数が捕捉出来ないとはどう言う意味だ?
「念のためにシル『鉄壁の乙女』を頼む。みんな敵に備えておいて」
「はい。かしこまりました『鉄壁の乙女』皆さん光のサークルの中へお願いします」
俺達は光のサークルの中で敵の襲来を待つ。
「フォン!」
突然風切り音と共に敵の攻撃が『鉄壁の乙女』によって阻まれた。
どこだ?どこにいる。
「みんな、敵を確認できてる?俺にはどこにいるのか分かってない」
「私もわからない」
「ベルリアどうだ?」
「いえわかりませんが先程の攻撃が風系の魔法か何かなのはわかります。ただそこまでの高威力ではないようです」
「俺とベルリアは地面を注視、他の3人は正面を、シルとルシェは上空を見ておいてくれ」
誰も目視出来ていないようなので、14の目を最大限活かすしかない。
「フォン!」
再び風切り音がするがこの際無視をして地面に目を走らせるが、何も捉えることが出来ない。
地面にはいないのか?
他のメンバーからも捕捉の声は聞こえてこないので、まだ誰も捉えることが出来ていないようだ。
地中に潜っている事も考えられるが今まで完全に地中にいる敵が地上に魔法攻撃をしてきた事は無いので地上からの攻撃な気がする。
どこだどこにいる?
「海斗、何か聞こえないか?」
「何がですか?」
「よく耳を澄ませてみてくれ」
あいりさんに促されて聞き耳を立ててみる。
「ブ〜ゥン」
微かに複数の音がする。何の音だ?
「あいりさん、何か音がしますけど、この音って何の音ですか?」
「私にもよくはわからないが、羽音と言うか風切り音の一種に感じるんだが」
そう言われてみると何かの小さな羽音に聞こえない事も無い。
しかしこの小さな音が羽音だとすると虫なんだろうか?
これだけ小さいと蜂とかの虫が考えられるが、俺の知っている蜂の羽音に確かに似ている気はするが、何となくリズムが一定では無い感じがして違和感がある。
とにかく羽音がすると言う事は地面ではなく空中のはずなので
「ベルリア俺達も空中を見張るぞ!」
俺達は14の目全てを空中に向けて小さな羽音の正体を確かめるべく神経を集中させた。
あとがき
明日、ニコニコ動画でコミカライズ1話が公開予定です。無料登録で読むことができるので是非、読んでください。
HJ文庫モブから始まる探索英雄譚もあわせてお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます