第286話 魔界の姫
俺は今1階層で魔界の事についていろいろ聞いてみている。
「ルシェ、嘘ついてるんだな。ベルリアもこう言ってるぞ」
「う、うそはついてない」
「だって、公爵か侯爵しか無いって言ってるじゃ無いか」
「だからどっちでも無いんだよ」
「ベルリア、埒があかないんだけど」
「マイロード、おそらく姫様は嘘をついているのではなく、本当に姫様なのですよ」
「さっきからお前らの言っている意味がわからないんだけど、シルはわかるか?」
「はい。おそらくなのですがルシェは爵位では無く王位に連なる立場なのでは無いですか?」
多い?大井?王位?ルシェが王位に連なる?それってルシェは王女様って事?
「シル、いくら何でもそれは無いだろ。ルシェが王女?ぷっ……」
「海斗、お前死にたいんだな。今すぐ死にたいんだな。『侵食の息……』」
「あ〜っ!嘘だよ。冗談だよ。ルシェは王女っぽい。王女でも何の問題もない。ファンタスティック!」
「それほどでもない。言いすぎだろ、ふふっ」
い、今のは『侵食の息吹』に間違いない。完全に発動させようとしていた。後少しで発動していたのか、それとも制約がかかって発動しないのか?怖い。命を賭けてまで実験したく無い。自分が狂って溶ける事などイメージすらしたく無い。
「それじゃあ、ルシェって本当に王女なのか?」
「正確には王女じゃない。子爵だからな」
「どう言う意味なんだ?」
「だからわたしはもう家が別なんだよ。わたしは子爵家なの」
「……?」
「パパは王様だけどママが違うんだよ。だから……」
ルシェの言葉で流石に事情に疎い俺でも理解できた。
よくアニメやラノベであるやつだ。所謂庶子というやつだ。
それで今までルシェが言ってこなかったのか。ルシェの性格からして全開で自慢してきそうな事なのにそれをしてこなかったって事はそれなりに事情があっての事だったんだな。
興味本位で聞いちゃったけど悪い事したな。
「あ〜、すまなかったな。あんまり触れられたくなかったんだな。事情も知らずにいろいろ聞いて悪かったよ。でも俺らが今の家族だからな。今日から俺の事、お兄ちゃんと呼んでもいいぞ!」
「は〜?お兄ちゃん?何言ってるんだ気持ち悪い!勘違いするなよ、別にパパにもママにも愛されてるんだよ!好きに出来る様に分家してもらっただけだ!」
「そうなんだ……」
気持ち悪い……やっぱりルシェに気を使ったのが間違いだったかもしれない。
「ルシェ、私もあなたの姉なのですから頼ってくれていいのですよ。ご主人様もあなたの事を気遣ってくれているのです」
「シル、どさくさに紛れて何言ってるんだよ、姉はわたしだろ。シルはわたしの妹だからな。わたしがシルの事を気遣ってやるんだよ。勝手に姉になるな!」
ルシェ、今それか?どう考えてもシルが姉だろ。みんなお前が妹だと思ってるぞ。末っ子の王女様……ルシェの我儘キャラそのままな気がする。むしろ、ふに落ちたというか納得だ。
「そうか〜。ルシェは元王女様だったんだな。だからそんなに我儘……」
「は?何か言った?やっぱり死に……」
「いや、やっぱり元王女だけあって気品にあふれてるんじゃないかな。マーベラス!」
「気品って、それほどでもないだろ。何言ってるんだよ。ふふっ」
最近ルシェの扱いに慣れてきたというか熟達してきた気がする。
気分屋だけど非常に単純で、寂しがり屋だ。
まあ王女だったのは驚いたけど、俺たちの関係はこれからも変わらない。
俺が長兄でシルが姉でルシェが妹だ。
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