第274話 申し開き
俺は今学校で春香達と話している。
正確には話しているの隼人だが、春香と前澤さんと話している。
「床が抜けて落ちたのは大丈夫だったんですよ。レベルも上がってたから3人とも無傷でした」
「そう。それはよかった」
春香が少し安心した表情を見せている。
「それじゃあ、どうしてダンジョンに泊まる事になったのよ」
今度は前澤さんが突っ込んできた。
「いや、それはですね下に落ちたら上に上がらないとダメじゃないですか。でも穴が閉じちゃったんで、階段を求めて歩いて回ったんですよ。そしたら時間がかかっちゃって」
「私よくわからないんだけどダンジョンってそんなに時間がかかる程広いものなの?」
「まあ、そうですね。広いです。ただ今回は回り道を結構したから」
「回り道?」
「下のモンスターが強かったので避けてるうちに時間が経ちまして」
「それじゃあ、それで時間がかかってダンジョンで泊まったって言う事?」
「そうそう、それで泊まったんだけど、結構快適でよかったよ。見張りもしてもらって安全でよく眠れたんだよ」
「ん?見張りもしてもらってって他に誰かいたの?」
前澤さん……鋭くないですか?隼人も何余計な事言ってるんだよ。
「い、いや、海斗だよ。海斗に見張りをしてもらってたんだよ。はは……」
「高木くん1人に見張りを任せて2人はずっと寝てたって事?」
前澤さんが軽蔑したような視線を隼人と真司に向ける。
「い、いやそう言うわけじゃないんだ。前澤さん、誤解だよ」
真司が堪らず参戦して来たが、余り良い予感がしない。
「大山くん。どう誤解なの?」
「海斗にも見張りをしてもらったけどずっとじゃないんだ」
「じゃあ、誰が見張ってたの?」
「そ、それは……」
真司、答えられないなら出てくるなよ。余計悪化したじゃないか。
「海斗、3人で遠征に行くって言ってたけど他にも誰かいたの?」
おおっ、今度は春香から俺に直球の質問が来た。どうする?どうしたらいいんだ。
「い、いや間違いなく3人で行ったよ」
「それじゃあ、現地で合流したの?」
春香がじっとこちらを見つめてくる。この澄んだ瞳を目の前にして誤魔化すのは無理だ。
「いや、誰とも合流はしてないよ」
「本当に?」
「うん。嘘じゃないよ。ただダンジョンの中ではいつもメンバーが増えるんだ」
「メンバーが増えるって?」
「俺にはサポーターと言うか、パーティを支えてくれるメンバーと言うか」
「葛城さん。ダンジョンには、いろんなマジックアイテムとかがあるんだ。それで海斗はそのマジックアイテムをいくつか持ってて、その中にサーバントカード と言うものがあって、魔法みたいに使い魔と言うか、サポートメンバーと言うかそう言う感じのを喚び出せるんだけど、海斗はそれを持ってるんだ。だから決して怪しい事は無いから安心してよ」
「そうそう、海斗はダンジョンに対しては異常に真面目だから変な事は何もしてないから。葛城さんが心配する事は何も無いよ」
「海斗そうなの?」
「うん。間違いなくそうだよ。今回もサーバントの助けがないとヤバか……いや、見張りがヤバかったよ。寝不足になる所だったんだ」
危ない。動転して余計な事を言いかけた。以前も危ない事は無いのか聞かれた事があったのに、危なかったと言えない。
「大山くん、本当に何も無かったの?」
再び前澤さんが真司を問い詰めようとする。
「う、うん」
「本当に?」
「い、いや〜。ちょっとはあったかな〜」
おい、真司何を言い出すんだ。
「ちょっとって何?」
「あ〜。昨日、強いモンスターに囲まれちゃって。ちょっと危なかったかな〜」
「水谷くん?」
「いや〜。ちょっと危なかったかもな〜。どうだったかな〜」
もうこれはダメだな……
「海斗、本当は危なかったの?」
「うん。ちょっとだけ危なかったけど、誰も怪我してないから大丈夫だよ。装備がいくつか壊れたけど、サーバントにも助けられて問題無しだよ」
「無理してない?大丈夫?」
「全然無理してないよ。安心してよ。春香が心配する様なことは何も無いから」
「本当に?」
「うん本当だよ」
突然のやり取りに少し焦ってしまったが、買い物友達の俺をここまで心配してくれるとはやっぱり春香は天使だな。俺は幸せものだ。
それにしても、真司。前澤さんに弱すぎだろ。危うく俺にまで被害が及ぶ所だった。
あとがき
明後日 HJ文庫 モブから始まる探索英雄譚2 が発売です。
店舗によっては明日入荷です。
新刊コーナーで是非買ってください。よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます