第259話 迷走

俺は今、ダンジョンを滑落してしまった。

シルとルシェの規格外の攻撃威力にこのダンジョンの床が耐えきれなかったようだ。

まあ前回も下層から抜け出した事があるので大丈夫だろうと思っていたが、抜けた天井を見た瞬間にその考えは吹っ飛んでしまった。

さっき穴が空いたはずの天井に穴が無い。


「どう言う事なんだ。なんで穴が無いんだよ」


「海斗、これって結構やばく無いか?」


「海斗、ダンジョンが自動修復したって事だよな」


自動修復、確かにそれしか考えられない。


「シル、もう一度天井に穴を開けられるか?」


「はい、やってみます」


シルが天井まで翔んで行き槍を構える。


「我が敵を穿て神槍ラジュネイト」


「ズガガガ〜ン」


爆音と共に再度天井に穴が空いた。


「よし、これで帰れるな」


帰れる事に安心して声を上げたが、見ている内にみるみる穴が閉じてしまった。


「まじか。本当に穴が閉じた」


俺は慌てて、事前にもらっていた下層のマップを確認する。

俺達がいたのは9回層エリアだから、そこに下層のマップを重ねると、現在地は……

嘘だろ。ここは20階層エリア。

どうすればいい。どうやって帰るんだ。俺でも20階層なんて行ったことがない。ましてや真司と隼人は10階層にすら行ったことがない。

まあ、ベルリアのせいで出現した恐竜達が25階層より奥のモンスターだと言っていたから、なんとかなるか?


「みんな聞いてくれ。今確認したけど、ここは20階層エリアみたいだ。上に登る階段まではかなり距離があるけど、なんとかたどり着いて上に登るしかない」


「ええっ。20階層って俺まだアイアンランクになったばっかりなんだぞ。それって無理だろ」


「ははっ、20階層か。俺死んだな。短い人生だった。一度でいいから彼女とカフェでデートしてみたかった」


「2人共しっかりしてくれ。絶対に大丈夫だ。俺とサーバントで絶対に帰る。真司と隼人も絶対に連れて帰るから大丈夫だ。2人には言ってなかったけど、俺はエリアボスも2回倒してるんだ。20階層程度何でもない」


「海斗〜」


「おおっ心の友よ〜」


運悪くマップで確認する限りいくつかある階段の丁度中間地点ぐらいに位置している。

しかもどこを通っても20階層エリアより難度の高いエリアを横切ってしまう。

2人にはああ言ったが正直自信が無い。無いがなんとかするしかない。


「シル、ルシェ、ベルリア。すまないが俺に力を貸してくれ。どうにかして上の階へ戻りたいんだ」


「御主人様、心配いりません。シルはいつでもご主人様の側にいます。必ず上階へお連れいたします」


「海斗、心配すんなよ。高々20階層だろ。全く問題ないぞ。辛気臭い顔するなよ悪霊が寄ってくるぞ、わたしに任せとけって」


「マイロード、私がいれば大丈夫です。40階層であっても問題ありません。お任せください」


流石は俺のサーバント達だ、本当に頼もしい。


「それじゃあ、ルートはこのルートで行こうと思う。ただしモンスターと交戦しながら進むには遠すぎる。まともに行けば俺と隼人と真司がもたないと思う。少々遠回りになっても構わないから、シル、できる限り敵を避けて進もう。敵を感知したら迂回して行こう。相手に感知された時だけ戦う。真司と隼人は後衛に徹してくれ。俺とベルリアが前衛に、数が多い時はシルも前に立ってくれ」


「わかった。それで頼む」


「皆さんお願いします。邪魔にならない様に頑張ります」


隼人と真司も覚悟は決まったようで顔つきが変わった。

恐らく俺のサーバント達は20階層だろうが全く問題ないだろうが、物資も含めて極力節約しながら進まなければ、隼人と真司の体力が先に尽きる。

俺は、まだエリアボス戦等の経験があるが2人はそれがない。

このエリアを歩くだけで精神と体力を削られるはずだ。

こうなった以上俺がなんとかしなければならない。


あとがき

モブから始まる探索英雄譚2の予約がアマゾン、ヤフーショッピング等主要ショッピングサイトで始まりました! 既に予約いただいている方も多数いるようです。ありがとうございます。

1巻も出たばっかりなので2巻の前に買って読んでください。よろしくお願いします!

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