第235話 12階層のドロップ
俺は今12階層を進んでいる。
スナッチの活躍があり探索ペースが明らかに上がってきている。
火蜥蜴対スナッチは明らかにエサ対捕食者のような構図となり圧倒している。
このまま小動物しか出ないようで有れば、スナッチに攻撃は任せ切っても良いぐらいだが、スナッチのMP残量と相談しながら進むしか無い。
スナッチが攻撃出来なくなると、また高火力の力押ししか無くなってしまう。
「シル、何か俺たちの出る幕は無くなってしまったな」
「まあ、パーティなのですから、そう言う事があっても良いでは無いですか」
流石シル。言う事が素晴らしい。
「だけどシルも虫はダメだけど、小動物とか蜥蜴は大丈夫なんだな」
「はい。虫でさえなければ全く問題ではありません」
「俺的には大差ないような気がするけど不思議なもんだな〜」
「ご主人様、そこは明確に違いますので細心の注意をお願いします」
「マイロード、流石に女性の方にそれは良くないですよ。虫は虫、他は他です」
「そういえばベルリア、お前は虫は大丈夫なのか?」
「もっ、もちろんです。こ、この私が虫如きに遅れをとるはずがありません」
「ふ〜んそうなのか」
ベルリアお前、嘘をついているな。まあ、わかりやすいから良いけど。
そのまま進んでいくと、コウモリの群れに遭遇した。
空中にいるコウモリに対してはスナッチの攻撃も絶対的ではなく、瞬殺という状況でも無いので全員で戦う事となった。
スナッチも攻撃手として参加しているが、俺もどうにかこのコウモリを仕留めたい。
武器を魔核銃に持ち替えて狙いを定めようとするが、コウモリの不規則な飛び方を予測するのは結構難度が高くなかなか当たらない。
それでも、俺にも意地がある。何が何でも当ててやるという気持ちをのせて、集中力を極限まで高めて連射する。
「プシュ」 「プシュ」
そのうちの一発がコウモリの羽を射抜いて、そのまま墜落したので追いかけてとどめをさして、消滅に追いやる事ができた。
俺の初コウモリだ。
爽やかな充実感に浸っていると
「もう終わりましたよ」
カオリンの声が聞こえて我に返ったが、既に他のコウモリは撃退されていた。
コウモリの消え後の地面を確認すると魔核に混じっていくつか違う物がある。
これってもしかしてドロップアイテム。
久々のドロップアイテムに心臓の鼓動が高鳴る。
近づいて確認してみるとそこには
金属の塊が一つとハサミ?が一つ落ちていた。
「ミク、この金属の塊って何だと思う?」
「多分、銀じゃない?」
「銀ってシルバーの銀?」
「そう、その銀」
「じゃあ結構価値があるのかな?」
「う〜ん。これが金だったら価値があると思うけど、銀って多分100gで6000円ぐらいじゃないかと思うんだけど」
「これってどのぐらいの重さだと思う?」
「500gぐらい?」
「じゃあ30000円よりも安いって事か」
「それより多分500gだけこの状態で買い取ってくれるところは無いと思う」
「それじゃあこれはどうしたら・・・」
「文鎮か記念品ね」
「それじゃあこのハサミは?」
「これは流石に私じゃわからない」
「私も刃物は結構見たことあるが、これは普通のハサミにしか見えないな」
「まあ、もしかしたらすごいマジックアイテムかもしれません。期待して持って帰りましょう」
「そうだよな。せっかくドロップしたんだし、きっと良いものに違いない。ギルドに行って鑑定してもらおう」
「これ、鑑定してもらうの?」
「もちろんだよ」
「まあ、期待しないぐらいでちょうど良いと思うわ」
メンバーの反応はかなり鈍めだが、ドロップアイテムと言うもののレアさが分かっていないのかもしれない。
俺にとってドロップアイテムがどれほどレアか。
2年間一度も出たことなかったんだぞ。ドロップアイテムと言うだけでレアなんだ。
この文鎮だってドロップアイテムと言うだけで価値がある。
残念ながら俺は書道を嗜まないが……
あとがき
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