第226話 12階層の見えざる敵
俺は今12階層進んでいる。
2日目の今日は昨日までの苦戦を糧にしてかなり良いペースで進んで来ている。
割り切って小さい敵は他のメンバーに任せて、ある程度的の大きい敵を中心に対応している。
小さな敵の時は盾役に徹する事でうまくいっている。
シルにも攻撃役を積極的に行なって貰っているのでかなり機嫌が良い。
暫く潜ってわかったがこの階層のモンスターはそれぞれが魔法を使ってくる。
そこまで強力なものではなくボール系中心ではあるが、やはり魔法を使ってくるのは非常に厄介だ。
「ご主人様今度も数が多いです。10体以上いそうですがはっきりとは分かりません」
「はっきり分からない?どう言う意味なんだ?」
「反応が微弱で重なっていたりしてはっきりとはわかりません」
「とにかく今までとは違う感じだから念の為シルは『鉄壁の乙女』を頼む。みんなも敵モンスターをしっかり見極めてから攻撃頼むよ」
「かしこまりました。『鉄壁の乙女』」
光のサークルの中で敵を待ち構えるが一向に来ない。なんだ?どうして来ないんだ?
「シル敵が来ないんだけど」
「ご主人様、敵の反応は確かにあります。近づいて来ているのは間違いありません」
「みんな、何か見えてる?」
「・・・・・・」
返事が無いので俺同様何も見えていないようだ。
皆の反応を見ようと横を向いた瞬間、大きな火球が10個連なって襲って来た。
「ズドドドォーン!」
『鉄壁の乙女』の効果でノーダメージだが通常の『ファイアボール』よりも明かに大きな火球の10連撃はかなりの大迫力だった。
どこだ?どこから攻撃して来た?シルの感じからしても見える距離にいても良いはずだ。
「ベルリア、分かるか?」
「いえ、確かに何かの気配を感じる事は感じますが、微弱すぎてよく分かりません」
ベルリアもダメか。
「ズドドドォーン!」
再び大型火球の10連撃が襲って来た。
まずいな。敵影が掴めない。このままではジリ貧になってしまうので撤退するか?
「ルシェとりあえず前方に攻撃してみてくれ」
「わかったよ。でも場所は適当だぞ。『破滅の獄炎』」
前方を獄炎の炎が照らし出すが正面で何かが燃えた感じはしない。
「海斗さん、何か動きましたよ」
「え!?全然分からなかったけど、何処?」
「前方の砂の上なのです」
砂の上?慌てて前方の砂の上を見るが何も見えない。
「ごめん分からない。どんなやつ?」
「すごく小さいのです。モンスターかどうかもわかないのですが、ネズミより小さいのです」
ネズミより小さい?
「ミク見えてる?」
「ごめん。私も全然見えてない」
「あっ。動いたぞ!」
「あいりさん。見えましたか?」
「ああ確かに何かが動いた。小さいが虫では無いと思う」
俺には見えていないが確かに何かはいるようだ。
「ルシェ前方の地面に向かってもう一発頼む」
「わたしも何にも見えてないからな。当たるかどうかわからないからぞ『破滅の獄炎』」
再び前方を獄炎が照らし出すが、確かに当たったかどうか全く分からない。
「シルどうだ?反応は減ったか?」
「はい。分かりづらいですが、恐らく2体程反応が減りました」
一応効果が得られたようだがまだ8体残っているらしい。
敵も先程の攻撃で警戒するだろうから同じ手は効かないだろう。
昨日のネズミと同じ様な展開だが大きく違うのは、未だに俺が敵を認識できていない事だろう。
「ズドドォーン!」
少し数を減らした大型火球がまだ襲って来た。
「シル、効果が切れたらもう一度『鉄壁の乙女』を頼む」
これで後1分は大丈夫なので、戦略を練りながら地面を凝視する。
「あっ!」
確かになにかが動いたが、かなり小さく素早い。
明かにネズミとは違う感じだ。もう少し平たい感じがするが、この小さいのがあんな大きな火球を出現させていたと考えると、小さくても決して侮れない。
あとがき
書籍版1巻は今週木曜日発売です。
よろしくお願いします。
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