第144話 ベルリアのスキル

俺は今9階層で悩んでいる。

ベルリアについて悩んでいる。

一昨日戦ったあの士爵級悪魔からすると、かなり物足りない。十分強いとも言えるが、比較するとかなり弱体化している。


「ベルリア、頑張ってくれたのはわかるんだけど、この前戦った時と比べるとちょっと弱くなってる気がするんだけど、特に剣術がなあ。」


「い、いえそれは、レベルが1になってレベルに合わせた肉体になってしまっているからです。もともと私は後衛だったのですが、努力を重ねて騎士に上り詰めたのです。剣術もレベルアップと共に上達します。武器も魔剣さえ頂ければもっとやれます。お役に立ちます。頑張ります。」


「どうしてそんなに此処にいたいんだ。別に此処でなくてもいいんじゃ無いのか?」


「いえ、此処にいさせてください。マイロードに我が剣を捧げましたし、ルシェリア姫のお役に立ちたいのです。もちろんシルフィー姫の為にも頑張ります。」


「えっと、シルフィー姫って何?いつから姫になったんだ。」


「ルシェリア姫の妹君なのですから当然シルフィー様も姫とお呼びするべきだと思いまして。皆さまの剣となって頑張ります。」


「ああ。そうなんだ。」


やっぱり悪い奴ではなさそうだな。ただ、俺に剣を捧げたって、お前、剣持ってないじゃないか。まあ戦力として悪くは無いと思うけど数千万円の価値があるかと言われると難しいところだ。

次にメインとも言うべきスキルの検証のだが、これは俺が怪我をするか、体力を大幅に削ってみるしかないが、あまり怪我はしたくない。どうしたものだろうか。

とりあえず体力を減らす為に、とにかく敵と戦って、それ以外はダッシュを繰り返してみる事にした。

強化されたステータスを持ってしてもダッシュを繰り返すと、かなり体力を削られるようで確認するとみるみる内にHPが減っていっている。

HPが40まで低下したのでそろそろ頃合いかと思い、覚悟を決めてベルリアに指示をする。


「ベルリア、俺に『ダークキュア』をかけてみてくれ。シルも、もし俺に異常が出たらポーションを飲ませてくれ。それでもダメなら地上付近まで運んでくれ。」


「かしこまりました。ご武運を。」


別に武運とかじゃ無いんだけどな。


「ダークキュア」


ベルリアがスキルを俺に向けて発動する。

一瞬、黒っぽく光った気もするが、特に何も変化はない。普通に動けるし、頭もはっきりしているが、体力が回復したような気もしない。

念の為にステータスを確認すると


HP40→44


う〜ん。一応回復しているのか?自然回復も1ぐらいはありそうなので実質3ぐらい回復したのか?

HP3の回復。微妙過ぎる。ポーションをちょっとだけ舐めたぐらいだろうか。


「ベルリア、ちょっといいか。一応俺の体に悪影響は無いようだが、HPが4しか回復してないんだが『ダークキュア』ってこんなもんなのか?前は体に空いた穴まで塞がってたんだけど。」


「い、いえちょっとお待ちください。『ダークキュア』はあくまで怪我を治すのがメインなんです。体力は死なないように少しだけ回復するだけなんです。今度は怪我に試させてください、お願いします。」


「そうなのか。怪我な〜。」


そう言われても正直そんな都合よく怪我出来るはずが無い。わざと矢や石に当たりに行く勇気はない。どうしようかな。

そういえば腕に虫刺されがあったが、今見ると治っているような気もしなくも無い。

かなり悩んでみたが意を決してバルザードでほんのすこしだけ指先を切ってみる事にした。


「今からちょっとだけ指から血を出すから、治してみてくれ。」


「はい。もちろんです。」


バルザードで指先をちょっと切るのも結構勇気がいる。映画とかではかっこよく切ったりしているが、やっぱり痛いのは嫌だ。

恐る恐る、皮一枚分だけちょっと切り込んだ。

刃物で切れる痛みを感じたが、大丈夫なふりをしてベルリアに手を見せてスキルを発動してもらった。


「ダークキュア」


「おおっ」


指先の痛みが消え少しだけ出ていた血も綺麗さっぱり消失している。治っている。

どのぐらいの怪我までいけるのかは確認が必要だが、結構すごいんじゃ無いだろうか。おまけに体には何の変調もきたしていない。かなり心配したが本当によかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る