第134話 本当の危機

俺は今9階層でオルトロスを撃破したばかりだ。


「シルどう言う事だ?オルトロスがもう一体いるって事なのか?」


「申し訳ありません。そこまでは分からないのですが、高位の敵の気配が消えていません。」


「みんな、聞いての通りだから休憩はちょっと無理っぽい。あと1体倒してから休憩を取ろう。作戦は、さっきと同じで行こう。オルトロスだったら問題なくいけるはずだから。」


取り敢えず、俺たちは臨戦態勢を整え直して再度神経を集中して敵を待つ。


「ああ、所詮は犬ですね。簡単にやられてしまったようですね。」


「はっ?」


奥から声が聞こえてきた。誰か他の探索者が居るのか?

声の方に集中して視線を向けるとそこから現れたのは、人ではなかった。

背丈は大体2Mぐらいだろうか、モンスターとしてはそこまで大きい方ではないが体は茶褐色で筋肉質、見た目は人間に近いが決定的に違うのは頭部に大きな角が2本生えている。


「先程の戦いを見ていましたが、貴方達なかなかやりますね。オルトロスは頭が良くないとは言え、それなりの強さはあったはずですが、見た目によらずびっくりしましたよ。なにやら1人は私と同族が混じっているようですし。」


喋った。しかも同族?こいつまさか・・・


「ルシェ、こいつもしかして」


「ああ、間違いないな。こいつ悪魔だな。見たことはないが、そこそこやりそうだ。」


「無礼な子供ですね。士爵級悪魔の私に対して礼儀がなってないですね。同族のよしみであなただけ逃してあげようかと思いましたがやめました。死んでください。」


「ルシェ、子爵級って。」


「いや多分こいつは子爵じゃなくて士爵級だ。一番下の爵位級だ。」


「じゃあ、大したことないな。ルシェの方が上だろ。」


「何をわけのわからない事を言っているんですか?子供が生意気な口をききますね。暇を持て余して、オルトロスと一緒に来てみたのですが暇つぶしぐらいには頑張ってくださいね。」


「シル『鉄壁の乙女』だ。みんな油断するな。最下級でも爵位級悪魔だから結構強いかもしれない。」


「最下級、最下級と平民風情がうるさいですね。もういいです。死になさい。『ダークメア』」


なにやら得体の知れない黒いモヤのようなものが吹き出して光のサークルの周囲を覆ってしまう。攻撃を仕掛けてきたようなので何かしらの特殊効果を持ったモヤなのは間違いない。

スナッチがモヤを吹き飛ばすために『かまいたち』を連発すると、だんだんもやが晴れてきた。


「ほう。なかなか優秀な防御壁のようですね。『ダークメア』を防げるとは思いませんでした。じゃあ次は

・・・」


と言いながら右手に持つ黒い剣でいきなり斬りかかってきた。


「ガンッ」


『鉄壁の乙女』は文字通り鉄壁の効果を発揮して全く寄せ付けないが、俺には見えなかった。あいつの太刀筋が全く見えなかった。気がついたら光のサークルまで剣が届いていた。

こいつはやばい。

今までの巨大な敵と違ってサイズ的にはどうにかなりそうだが、なんかやばい。


「シル『鉄壁の乙女』だけは切らさないよう注意してくれ。ここからは相手に気取られないように極力指示は控えるから、それぞれ前回と同じように頼む。」


そう言うと俺はバルザードを横に一閃して斬撃を飛ばす。それを合図に全員が攻撃を開始する。

アイリさんとミクが魔核銃を放ち、カオリンが『アースウェイブ』を発動。スナッチは継続して『かまいたち』で攻撃。ルシェも『破滅の獄炎』を発動して、敵を総攻撃する。

それぞれが攻撃を連発しながらも敵を注視する。

攻撃は全弾命中している。命中しているというよりも全く避けるそぶりを見せない。


「嘘だろ・・・」


オルトロスでさえ、なんらかのダメージを与えることは出来ていた。なのにこいつは完全にノーダメージのようだった。

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