第129話 再び9階層

俺は今9階層に潜っている。

前回はスタンピードにあい、探索が殆ど進んでいない為、週末にメンバーと合流するまでに、ある程度探索を進めておきたい。


「シル、もうさすがにスタンピードはないと思うけど、なにが起こるかわからないから注意は怠らないでくれよ。」


「はい、かしこまりました。出来る限り慎重に進みますね。」


しばらく歩いていると


「モンスターが奥に3体います。」


「群じゃないよな。もっと奥とかいないよな。」


「はい、大丈夫です。分かる範囲内にはいません。」


ちょっとびびって慎重になってしまうが気を取り直して奥に進んで行く。


奥にいたのは雪男?みたいなやつだった。

こちらを認識すると同時に背中を向けて逃げ出した。


「えっ?」


今までにない行動にあっけにとられていると、30mほど逃げたところで反転してこちらに向かって何かを投げてきた。

なんだ?投げる動作は分かったが物が見えない。


「パシュン」


地面に何かが埋まっている。よく見るとパチンコ玉程度の鉄球のようなものが埋まっている。

どうやら小さすぎて目では追えなかったようだが、殆ど魔核銃のバレットのようなものだ。

やばい。これは見えない上に当たったらやばい。あんなでかい図体なのにこんな暗器のような飛び道具を使うとは何てずるいモンスターだろうか。

俺は慌てて盾を構えてからシルに


「シル『鉄壁の乙女』を頼む」


と伝えてからルシェをカードに送還すると同時にシルを抱きかかえて、雪男目掛けて走る。


「きゃっ」


もう何度か同じ戦法を取っているがシルがなかなか、慣れてくれない。

途中何度か光のベールに鉄球が当たったようだが、効果が無いのがわかった途端に、3体示し合わせた様にまた逃げ出した。逃すわけにもいかないので必死で追いかける。正にリアルけいどろ状態だ。

思いのほか雪男のスピードが速くて距離がつまらない。

しばらく追いかけると『鉄壁の乙女』の効果が切れたが、切れた途端再度こちらを向いて投擲を始めた。

やっぱりこいつはずるい。

シルに指示を与え『鉄壁の乙女』を発動し直して、また追いかけ始めるが距離が縮まらないので埒があかないが、シルを抱っこしたまま狙いをつけた攻撃をするのも難しい。

『ウォーターボール』は有効だとは思うが走りながら拘束されると思いっきり自滅しそうなので使えない。

どうする。考えてはみたがやれる事は限られている。

俺は咄嗟に右手を前に向けて掴むイメージで雪男の足首辺りに向けて理力の手袋の力を発動する。


「ドガッ、ズザーザー」


一番真ん中を走っていた雪男が物の見事に転倒した。

理力の手袋の力で走っている片足を掴むことに成功したが、思った以上に効果的だった。

転倒した雪男を背後から撃ち抜いて消失させた。

残りの2体も一瞬立ち止まって、考えるそぶりを見せたが、再び逃走を始めたので、俺も走り出し、同じ要領で理力の手袋の力で雪男を転ばせることに成功した。

転んだ雪男を再び後ろから狙い撃って消失させたが、流石に最後の雪男は戦法を変えてきて、逃げるのをやめて、つかず離れずの距離感でこちらに間髪入れずに鉄玉を投げてくる。

結構距離があるので俺はルシェを再召喚して


「ルシェ、あいつを焼き払ってくれ。」


「ああ、わかってるよ。『破滅の獄炎』」


ルシェの攻撃はえげつないな。一瞬で雪男は消失してしまった。


「ご褒美くれよ。」


「私もお願いします」


俺は週末に溜め込んだ魔核からそれぞれに手渡してあげた。まあ2人ともそれほど本気で頑張ったわけでもないからか、数が多くなくてもそれなりに満足そうだった。

この日を皮切りに金曜日まで毎日9階層を探索して周ったので、結構手馴れてきた。

明日は久しぶりにK-12のメンバーと合流するので楽しみだ。

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