第86話 ウーパールーパーは怖く無い


俺は今8階層でウーパールーパーと対峙している。

ウーパールーパーを初めて見たのは多分小学生の時にペットショップに連れて行ってもらった時だと思う。

特異な風貌に興味を惹かれた記憶がある。いわゆるキモかわいい感じで親に買って欲しいとせがんだが、あえなく却下されたおぼえがある。

しかし、このウーパールーパー型モンスター、風貌はまるっきりウーパールーパーなのだがサイズが3メートル近くある。正直このサイズのウーパールーパーはキモかわいいを大きく逸脱して、単純に気持ち悪い。

近づくと生理的嫌悪感を覚えてしまう。

しかもこいつは溶解液を口から吐き出すので、ノーダメージで倒す必要がある。


「こいつは、最初に話したように溶解液を吐くから気をつけて。スナッチと俺で遠距離攻撃だ。ミクも出来たら攻撃に参加してみて。 カオリンは後方から支援、愛理さんは、いつでも出れるように待機をお願いします。」


そう指示を出して。ウーパールーパー型と距離を測りながら攻撃に移ろうとした瞬間


「トスッ」


「え?」


ターゲットのウーパールーパー型にボウガンの矢が刺さっていた。

唖然としていると更に矢が刺さってウーパールーパー型は消失してしまった。

もう一体もスナッチの『かまいたち』に切り刻まれてあっという間に消失してしまった。


「きゃー、ミクさんすごいです。あっという間に倒しちゃいましたね。ボウガンかっこよかったです。使ったことあったのですか?」


「ううん。初めてだけど、狙って撃ったらなんか当たっちゃった。」


「すごいですね。私もボウガン使ってみようかな。」


初めてでこの感じ?

戦力になって欲しくてボウガンを渡したけど、いきなり戦力になってくれて嬉しんだけど、

ちょっと複雑だ。俺の出る幕がなかった。

なんかミクすごいな。


「まあ、うまく倒せてよかった。今後もウーパールーパー型は今の要領で倒していこう。」


それからしばらく探索していると今度もスナッチが


「キューキュー」


と鳴き始めた。どうやら本当に敵を探知できているようだ。

4人で水面を凝視して集中していると今度もウーパールーパー型が3体現れた。


「みんな、さっきよりも数が多いから慎重に行こう。とにかく距離を保って遠距離攻撃で行こう。」


そう言って臨戦態勢に入る。今度は流石に俺の出番もあるだろうと思い慎重に一番左の個体に魔核銃で狙いを定める。


「ドシャーン」


「え?」


目の前のウーパールーパー型に突然炎雷が炸裂して、一瞬で消失してしまった。

一体何が起こったのか理解できずに、唖然として振り返るとカオリンが『ファイアボルト』を発動したようだった。

こちらもスナッチの『かまいたち』同様ゴーレムには通じなかったが、ウーパールーパー型には十分な威力を発揮していた。

カオリンの『アースウェイブ』が有用すぎて、『ファイアボルト』の存在を完全に忘れてしまっていた。

突然の出来事にちょっと動揺してしまったが、気を取り直して残りの2体に向かおうとするが、既に戦闘は終わりかけていた。

先程の戦闘と同じように、スナッチが『かまいたち』で切り刻み、ミクがピストルボウガンでウーパールーパーの頭を正確に射抜いており、見ている間に2体とも消失してしまった。

また今回も俺の出番が一切なかった。

7階層のゴーレムの時は相性の問題でそれほど目立ってなかったが、うちのパーティメンバーってひょっとして結構強いんじゃないだろうか?

強いと言うか、なんか俺と違って才気を感じる。

まだパーティを組んで日は浅いが、ちょっとパーティでの立ち位置に不安を覚えてしまう。

これからもパーティに捨てられないように頑張らなくてはいけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る