第81話 ワニわにパニック

俺は今8階層に潜っている。

もしもの時のためにライフジャケットを着用している。


「シル、ルシェこの階層は初めてだから、しばらくは慎重に行くぞ。敵が現れたら『鉄壁の乙女』の中から攻撃するからな。絶対無理をするな」


「はい。かしこまりました」 「心配性だな。私たちがいれば大丈夫だって。」


足下に床はずっと濡れており、非常にスリップしやすい。

前方を見ると沼地のような地形が現れた。


「ご主人様、手前の方に3体いると思われます。見えてはいませんが気をつけてくださいね。」


全く、気配も感じられない上に濁った水の中は全く伺い知ることが出来ない。

恐る恐る、水辺との距離を詰めると、突然、ワニのようなモンスターが3体、口を開けた状態で、勢いよく飛び出してきた。


「うぉっ。シル『鉄壁の乙女』だ。」


慌てて指示を出した『鉄壁の乙女』に阻まれて、開けた口をばくばくやっているが、かなりの迫力だ。クロコダイルなどは6メートルに迫る大きさを誇る個体もいるそうだが、まさに6メートルぐらいありそうだ。

圧倒的な重量感とサイズで、もはや恐竜といっても過言ではない。

どうでもいいが、この巨体に魔核銃って効果あるのか?一抹の不安がよぎったがやってみないとわからないのでとにかく頭と胴体めがけて発砲してみた。


「プシュ」 「プシュ」


どうやらゴーレムのようにノーダメージではないようで、バレットを食らった個体は、暴れまくっているが、余計怖い。恐竜と言うか、怪獣のようだ。よく見るとバレットが着弾して埋まっているが貫通はしていない。

取り敢えず怖いので


「ルシェ、『破滅の獄炎』を頼む」


「グヴオージュオー」


暴れていたワニ型モンスターは一瞬で消失した。

ちょっと冷静になる時間ができたので、考えてみる。

このサイズと重量感なので盾で防いだら、まず間違いなく吹き飛ばされる自信があるので却下。

『ウォーターボール』は効果があるか試してみる価値はあるが、ふつうに考えてバレットより氷が効果的とは考えにくい。

となると、バルザードか魔氷剣だが、この巨体相手に超近接は怖すぎるので必然的に魔氷剣だが、魔氷剣の刃渡りがおおよそ50cmから60cmと言ったところなので、今のままだと最低でも50cmの距離まで近づかないといけない。バルザード単体よりは多少マシだが正直やばい。

怪獣相手に50cm迄近づく勇気はない。

どうする。どうすればいい。もうすぐ『鉄壁の乙女』が解けてしまう。

とにかくちょっとでも遠くから攻撃したい。今のショートソード型をロングソードにできないだろうか。ちょっと体積的に厳しいかしれない。思いつかない。


「シル、もう一回『鉄壁の乙女』を頼む。ルシェも、もう1匹頼む」


ちょっと時間稼ぎをして再度検討する。ロングソードには氷の体積が足りない。ただ長さはもっと欲しい。あれだ、フェンシングで使ってるような剣。ちょっと違うかもしれないが、昔見たアニメのヒロインが使っていたレイピア、あれをもうちょっと細くして伸ばしたらいけるんじゃないだろうか?


「ウォーターボール」


いつもの魔氷剣よりは細長くなった。しかし記憶にあるアニメの剣のようにスマートではない。

ちょっとイメージが足りなかったようだ。

もう一度


「ウォーターボール」


今度ももう少し伸びで細くなったが、もうちょっといける気がする。


「ウォーターボール」


三度目にしてイメージしていた剣が出現した。刃渡りがおよそ1m弱ぐらいある。従来型よりもかなり伸びたイメージだ。

細いので流石に斬ったり、受け止めるのには向いてないと思うが突く分には行けそうだ。

そのまま、残った1匹めがけて、思いっきり刺してみる。細いせいもあるのだろうが殆ど抵抗を感じる事なく刺さったものの、細すぎでそれだけでは致命傷にならない。慌てて爆砕するイメージを重ねる。


「ボフゥン」


いつものバルザードと同じ効果を発揮してくれた。

俺は遂にワニ型モンスターを消失させることに成功した。

流石に8階層だけあって魔核は親指の第1関節分ぐらいの大きさがあった。1個2500円といったところだろう。


「ご主人様お腹がすきました。魔核をお願いします。」「連発して3倍お腹が減ったから、魔核6個くれよ。」


いや、発動したのは2回だから3倍はおかしい。しかも6個って計算がおかしいだろ。油断も隙もない。

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