第72話 ゴーレム狩り


今日も3人で7階層に潜っている。

今日の目的はいつもと違う。魔氷剣を使用しての実践、ゴーレムの撃破が目的だ。

これができれば、もう7階層には用がないので8階層に進もうと考えている。


「シル、ルシェ、俺は魔氷剣を使ってみるからダメなら、援護を頼むな。」


ゴブリン相手には効果は実証済みだが、ゴーレムとは格が違う。やってみないと通用するかわからない。


「ご主人様 正面に3体反応があります。」


しばらく進むと、アイアンゴーレム×2 ストーンゴーレム1体のグループに遭遇した。


「シル『神の雷撃』で右のアイアンゴーレムを頼む。ルシェは『破滅の獄炎』でストーンゴーレムを頼む。俺は左のアイアンゴーレムを相手にする。」


俺はアイアンゴーレムに近づきながら魔剣バルザードを正面に構える。

20秒という時間制限があるので、距離を慎重に測りながら


「ウォーターボール」


バルザードから氷の刃を伸ばす。

バルザードの攻撃回数も一度に5回という制約があるので、あまり手数はかけれない。

アイアンゴーレムの正面に立つと、ゴーレムが右腕を振りかぶってパンチを見舞ってきた。

そこまでスピードは感じないが、迫力はすごい。

不恰好に大きく避けて、そのままゴーレムの右腕をめがけて、魔氷剣バルザードを振るう。


「ザクッ」


鈍い手応えと共にあっさりとアイアンゴーレムの腕を切り落とした。

いける。

とっさのことで破裂のイメージを重ねることはできなかったが、問題なく攻撃は通じた。しかも氷の刃も

バルザードの一部と化しているせいか、全く刃こぼれもしていない。

片腕をなくして右側が隙だらけになったゴーレムの右側にスーッと移動してそのまま近づきながら横薙ぎに一閃。今度はしっかりと破裂のイメージをのせる。


「ボフゥン」


バルザードでゴーレムを背後から倒した時と同じ手ごたえ、同じ効果を発揮した。

やった!

今のはかなり俺のイメージする探索者っぽい感じだった。正面から強敵を斬りふせる。

ちょっとカッコいい。いや、今までの俺に比べるとすごくカッコいい。

横を見るとシルもルシェもさっさとゴーレムを片付けていた。


「よし。うまくいった。今日はどんどんゴーレムを倒して回るぞ。」


「はい。かしこまりました。」「あ〜あ。調子にのるなよ。死んじゃっても知らないぞ」


今日はとにかくゴーレム相手に実践を積みたい。気は、はやっているが、頭は結構冷静だ。

1対1はなんとかなりそうだ。問題は複数を相手にする時だろう。さっきの戦闘でもゴーレムを倒すのに2手かかってしまっている、2体以上相手にする時は注意が必要だろう。


「ご主人様、あちらに4体のモンスターです。」


ちょっと進むと4体のブロンズゴーレムのグループに遭遇した。


「シルとルシェは、左から2体を頼む。右から2体は俺がやる」


今度は2体を同時に相手にしてみる。

ポリカーボネイト製の盾を左手に構えて右手にバルザードを握る。

基本ビビリなので、2体同時に相手をする気満々だが、安全策に盾を構えている。


「ウォーターボール」


バルザードが氷刃を纏う。

ダッシュで一番右のゴーレムの更に右側に回り込み、袈裟懸けに一閃する。


「ザシュッ」


当たるのは当たったが、ちょっと浅かった。盾を持ちながら振るうのが思いのほか難しい。剣を振れる角度が限定され、距離感も取りづらい。盾を持った状態で魔氷剣を使用したのは初めてだが、こんなに違うとは思ってなかった。ただ、今更どうしようもないので更に踏み込んで追撃。再度袈裟斬りに伏せ、ゴーレムを爆砕させた。その瞬間横からもう一体のゴーレムの剛腕パンチが襲ってきた。

とっさに盾を間に挟む。


「ドグヮアン!」


「ううっ、痛っ!」


強烈な衝撃と共に吹き飛んでしまった。いくら盾があっても、レベルアップして強化されたステータスがあっても、人間がまともにこの巨躯の一撃を食らったらただでは済まない。


「ああっ、ご主人様、大丈夫ですか?私が今すぐ助けますね。少しだけ我慢していてください。」


シルがフォローしてくれようとするが、視線でそれを制した。

自らの作戦ミスに後悔しながらも、このままやられるわけにはいかないのでとっさに起き上がり、盾を放棄してゴーレムに向き合う。

再度殴りかかってきた腕を横薙ぎに斬り落とし、そのまま正面に飛び込んで、胸元に魔氷剣を突き立てる。

そのままゴーレムを爆散させることに成功した。

魔氷剣は十分に通用したので、あとはもう少し使い方を検討した方がいいだろう

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