第15話 LV10の奇跡

ストーンランクになってからモチベーションが一気に上がり、今まで以上にダンジョン探索にのめり込んでしまっている。


もうダンジョン中毒かもしれない。

中学生の頃に VRゲームにハマった感覚に近い。

寝る間を惜しんででもやりたい。 やってないとダンジョンのことばかり考えてしまう。


もはや、ほとんど病気だ。

レベルアップやランクアップ、 スキルの発現やサーバントの存在など今までになかった事の連続で、正直楽しくて仕方がないのだ。

まるでゲームの主人公にでもなったような錯覚を覚えてしまう。


のめり込んで1ヶ月以上潜っているが、残念ながらレベルアップはしていない。

あと1つでLV10 となるが、明らかにレベルアップのペースが落ちてきた。

1階層でLV3で頭打ちになったように、そろそろ2階層でのレベルアップ限界が近づいていると思われる。

なかなかレベルアップはしないが、伝説のスライムスレイヤーの俺からしてみれば、1ヶ月程度の時間は全く苦にはならない。

金色のゴブリンでも出てこないかと2匹目のドジョウを思い、日々狩りに没頭している。


そしてついにその日が来た。



高木 海斗

LV 10

HP25

MP 12

BP 25

スキル スライムスレイヤー

ゴブリンスレイヤー(仮)

神の祝福 NEW


俺はLV10に到達した。


一般的にLV10には、特には何の意味をも持たないと言われているが

なんと俺には劇的な変化が起きた。


「おおーっ ! !」


自分でステータスを二度見してしまった。

まずステータスの数値だが、今までほとんどLV1につき1づつしかあがらなかったのが、何とBPが5も上昇していた。

HPに至っては6も上昇している。


何が起こったのかわからないが、


確変が起こったのか?

それとも何かの間違いか?

俺の時代がやってきたのか?


さらに上がったステータスの一番下に何と3つ目のスキルが顕現していた。


その名も 『神の祝福』


なんか名前だけで主人公のスキルっぽい。

おそるおそる、スキル名を意識し説明を確認した。


神の祝福 ・・・神およびその眷属に愛されているものに与えられる。 レベルアップ時にステータス上昇補

正がかかる。上昇率は神およびその眷属からの愛の程度に依存する。


これは・・・ まさかのチートスキル。

正真正銘の主人公補正スキルではないのか。

内容からすると 俺に神の知り合いは1人しかいない。

まず間違いなくシルフィーに関係するスキルだろう。

シルフィーとの『愛』が深まった為に顕現したスキルだろう。

もちろん『愛』といっても ロリコンLOVE ではなく親愛や敬愛の方だ。


もうシルフィーには頭が上がらない。

いや、やっぱりシルフィーさまと呼ぼうかな。


今まで2年以上一人でスライムを狩り続けてきた。

LV3でも自分なりに頑張ってきた。

誰にも相談できなかったが、本当は不安しかなかった。

上がらないレベル。

上がっても1づつしか上昇しないステータス。

自分がクラスメイトAのモブである自覚はあったが、もしかしたら自分もいつか主人公になれるんじゃないかと夢見ていた。

最底辺でも続けていれば、やめさえしなけば、いつか夢に見た英雄になれるんじゃないかと本気で思っていた。

だが現実は甘くなかった。

話に聞く有望探索者は、1ヶ月で俺のステータスやレベルを軽く超え世の中で認知されていく。


みんなに認められたい、クラスメイトAのモブキャラではなく『高木 海斗』として認められたい。

周りがどんどん離脱していく探索者を俺は続けて行くことで、モブへの抵抗をしていたのだ。

ただ、現実の俺はモブ以外の何者でもなかった。


やっぱり不安だった。

孤独だった。

苦しかった。


ステータスが5アップしたからといって誰かに認められるわけではない。

誰かに褒められるわけでもない。

劇的に強くなったわけでもない。

だけど俺にとっては今までの全てが報われたとさえ思えた。

まだこれからだ。そう思えた。


探索者になってよかった。


シルフィーに出会えてよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る