第二章 そして王子は逃亡する

第二章 そして王子は逃亡する1

バレーノ王国には初代王と旅を共にし、虹の麓に国を創った七人の仲間達に由来する地位が今でも残っている。

 それらの地位は虹の色から名前をとり「七色の地位」と呼ばれており、その地位は特別なものとされている。


 初代王の仲間達の中でもふたりの剣士の活躍は後世にも広く知られてえかり、いつしかそのふたりの剣士は「紅(くれない)の騎士」「蒼(あお)の騎士」と呼ばれるようになり、やがてふたりの呼称は王、もしくは次期王となる王子を護る騎士へと贈られるバレーノ王国の騎士達にとって誉れ高き称号となった。


 それ故、紅の騎士・蒼の騎士を決める際には選考を公平なものとするため、毎回志願者達による御前試合が行なわれている。これはもう何年も続けられてきた騎士の選出方法である。


 御前試合に参加するための資格は特になく、バレーノ王国に住む者ならば誰でも試合に参加することができるが、参加者の大半は城に仕える現役の兵や騎士である。


 たとえ称号を得ることができなくても自分の実力を周囲に披露するには絶好の機会であり、この御前試合をきっかけに新たに兵や騎士として声をかけてもらえる可能性もあるため、試合への参加者はかなりの人数にのぼる。


 二年前に行なわれた御前試合では十六歳という若さでセロイス・ディーゴが「蒼の騎士」を拝命したことで話題となったが、今年おこなわれた御前試合で新たな歴史が刻み込まれることとなった。


 今から三か月前におこなわれた御前試合に十六歳の少女が参加を志願してきたのだ。


 それを聞いた者達は戸惑いつつも、誰もが参加できるという規約もあるため、少女の御前試合への参加を認めたが、その時には誰もこのような結果こになるとは夢にも思っていなかったのだ。


 まさかその少女が兵や騎士達を相手に試合を勝ち抜き、そして「紅の騎士」を拝命することになるとは。


 ――ルベール王国史上初めて「紅の騎士」を拝命し、騎士となった少女。


 その少女こそ、カメリア・ヴォルドである。

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