カルシと老人

I,my は今日の日も曖昧なんだ 雪上に戦場が蠢いていた

「ああ、そうだ狩りに出なくちゃ」 あいつはもうベッドに交わって

ゲンおいで 狩りに行くから 猟銃はかたかた笑う

カリブーの群れが居たような ゲンはただ鼻先を濡らした


はっとした ゲンはもう死んでいたから

唐檜のさ 色を見て思い出した

だったら君は誰なのか たった今、失くしてしまおうか

戦場は鳴りを潜めて 銃弾は水平線辿って行く

地雷は妻の墓石へ 献杯は子へのプロパガンダ


老人は夢を見る シャシリクの匂いで

君を思い出す それにも慣れたな

「すまんな、カルシはさ、俺と居て幸せかい?」

それはどうかなあ 夢の話だといい


蒙昧な生涯は葬送だった 平凡な戦場に虐げられた

カルシとさ、狩りに出ていく 一体自分が何歳なのかも知らず

カリブーは猟銃に撃たれて 血を流し動かなくなる

火薬だけ剥ぎ取ったみたいな

カルシだけ、吠えてうるさかったな


老人は夢を言う

「鉛の匂いで消えていった記憶は、俺を苦しめる」

「すまんな、俺はね、君と居て幸せだ」

老人は夢を見る

それも終わる


殺される老人は夢を見る 火薬の匂いで

家族を思い出す 「呪われてるよな」

「すまんな、カルシはさ、俺と居て幸せかい?」

それもどうかな 血溜りの中で ねえ


『眼を開けてよ 眼を開けてくれないと

 いや、いや、いや、いや、いや、いや』

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