20:00
『ごめんね、みんな最終便まで待ったんだけど、やっぱりそっちにいけないみたいなの。』
「そうだよね、うん、大丈夫。気をつけて家帰ってね。」
『ありがとう。また日を改めてそっち行くからね。』
「うん、じゃあね。」
『はい、バイバイ。』
今日は、久しぶりに家族と会えることになってたのしみにしていたのに猛吹雪で飛行機が欠航。
夜まで家族は空港にいたけどやっぱりダメらしい。
朝からわかっていたことだけど、
みんな分のご馳走もプレゼントも用意して、
会えるのを楽しみにしていたのにこんなのあんまりだよ。
「どうだった?」
彼が聞いてくる。
「やっぱりだめだって。お正月から会ってなかったから楽しみにしてたのに。」
「そっか。ごめんね、僕が天気操れればみんな来れたのに。」
「そんなの誰もできないでしょ。しょうがないと思ってはいるけど…ね…。」
「うん…。とりあえずご飯食べよっか。」
「うん。」
私たちが家族が来ると思って準備したご馳走を二人だけで食べ始める。
雪なんか降っていなければ、今頃楽しいクリスマスパーティーができたのにな。
こんな大量のご馳走二人で食べきれないよ。
「美味しいね。君が作ったこのトマトリゾット最高だよ。」
「ありがとう。」
彼は笑顔で食べすすめるが、私は愛想笑いしかできなかった。
すると彼は何を思ったのか立ち上がりラジオを手に席に戻ってきた。
「ラジオ聞くの?」
「さっき友達から聞いてさ。噂だけどそのラジオ放送聞けたら幸せになれるらしいよ。」
「わぁー…、なんか嘘くさいね。」
「まあ、聞けたらラッキーらしい。落ち着いた声で楽曲紹介だけしてるんだって。」
「ふーん、手紙とか読んだりしないんだ。」
「多分ね、うーん…どこでやってるんだろうな…。」
彼は一生懸命ラジオの周波数を合わせる。
私はそんな一生懸命にラジオをいじくっている彼を愛犬を見るような目で見つめる。
こういう少し子供っぽいところが私を少しずつ元気にさせてくれる。
友達には少し幼くない?と不評だけどそういう所が好きで付き合ってるんだよなぁ。
「ごめん、合わない!」
彼は諦めて、ラジオをテーブルに置く。
「まあ、噂なんでしょ?いいよ、TV見る?」
「うん。」
彼はリモコンをつけに立ち上がる。
[May happiness come to everyone who listens.
皆さんこんばんわ。明日のクリスマスが終わるまでひとつまみの奇跡をお届けします。]
「あれ?どっかにつながったみたい。」
「じゃあTVつけなくていっか。」
「うん。」
彼はまたご飯を食べ始める。
[では、次の曲、I’ll Be Your Santa Tonight。あなたに幸多からんことを。]
そう言ってゆったりした曲が流れ始める。
「踊ろっか。」
「え?」
彼は私のナイフをとりあげて手を持って広いところに連れ出す。
「ダンス出来ないよ?」
「ダンスなんて雰囲気でいいんだよ。楽しんだもん勝ち。」
「誰に勝つの?」
「知らない。」
と楽しそうに笑う彼。
曲と彼に合わせて踊る。
彼の手が暖かい。
これからも大切な人と一緒に過ごせたらいいなとふと思う。
こうやって私を元気付けてくれて、いつもそばで優しくしてくれる彼に惚れ直した。
「ありがとう。」
「ん?うん。」
なんのお礼かわかってくれない鈍感のところも好きだよ。
これからも出来れば一緒に居たいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます