第14話 火星で一攫千金

「いらっしゃいませ、ご主人様♪」

 店に入るなり、急なウエイトレスの出迎えにダイチは面食らった。


「まあ、ダイチさん!」


 ウエイトレスのミリアは声をはずませる。ウエイトレス姿といっても、彼女は普段からこの姿のため新鮮味はない。


「ダイチさんがわざわざ来てくれるなんて感激です。ダイチさんが私のご主人様だったのですね」

「は?」


 いきなりわけのわからないことを言い出して、ダイチは面を喰らう。


「何を言っておる! ダイチは妾の夫になるべき男であるぞ!」

 とさっきから抱きかかってくるフルートは妙な主張をしてくる。


「大丈夫ですよ、フルート。ご主人様と夫は両立できるものですから」

「ほうほう、そういうものなのか」

「くだらないやり取りはいいから。早く案内してくれよ、ウエイトレスが店の前でお客を立ち往生させたら話にならないだろ」

「それもそうですわね」


 ミリアは納得して手を出して道を開ける。


「こちらです。」


 ウエイトレスの基本に則って店内へ案内する。

 色取り取りのカーテンや絨毯が敷かれており、中々オシャレな店である。


「うむ、良い店であるな」


 フルートも気に入ったようだ。

 ミリアがどんな店で働いているか知りたい、とフルートが言い出してこうしてきたわけだが一悶着がないことに内心ホッとする。

というか、ダイチも少しばかり気になっていた。


(あいつ、真面目にウエイトレスやってたんだな……)


 常にウエイトレス衣装を着ているが、実際にウエイトレスとして働いている姿を見たことがなかったので、単なるコスプレ趣味なのではないかと思ったが本物であることがわかっただけでも収穫であった。


「こちらがメニューになります」

「ダイチ、主は何を頼む?」

「えぇっと、コーヒーに紅茶、ジュース……一通りあるな、オススメ?」

「ケーキとかパフェが絶品なんですよ。私はこのオリンポスケーキがいちばん好きです」

「って、それお前が食べたいだけだろぉ!?」

「どうしたのじゃ、このオリンポスケーキ、中々美味しそうではないか」


 フルートはメニューの写真を指して訊く。


「いいか、フルート。オリンポスっていうのは火星にある太陽系で一番でかい山の名前だぞ」

「なんと! 火星にはそのようなものがあるのか! 是非一度見たいものじゃな。ハネムーンにでものう」

「いやいや! そういう話じゃねえからな」

「まあまあ、ダイチさんもそう目くじら立てずに、とっとと注文してくださいませ」

「ああ、じゃあ、俺はコーヒーで」

「世はパフェじゃな。このレッドクライシスパフェを食べてみようかと思う」

「かしこまりました」

「……レッドでクライシスってどんなパフェだよ?」


 脳裏に激辛という単語がよぎったが、大丈夫なのだろうかとダイチは不安に駆られた。


「――ようこそ、いらっしゃいました」


 おっとりとした口調の女性がやってきた。この女性、ミリアと同じウエイトレス姿である。

「店長のアリアンです。いつもミリアのお世話になっています」

「こちらこそって……こういう場合はミリアがお世話になっていますっていうものなんじゃないですか?」

「いえいえ、ミリアにはいつもお世話になっていますよ、主に試食で」

「そっちですかッ!?」

「彼女がどんどん試食して忌憚なき意見を言ってくれることで、私は新メニューの開発に没頭できているんです」

「そ、そうなんですか……」


 ダイチは呆れたようにミリアに視線を向ける。


「アリアン店長は私の憧れなんですよ、ダイチさん」


 そう言われてダイチはもう一度アリアンを見る。

 確かに美人だ、とダイチは思った。流れるような金色の髪にサファイアのような瞳、整った顔立ちは改めてじっくり見るとドキリとさせられる。


「店長は金星人なので、とても綺麗なのですよ」

「ミリア、そういうことはあまり人前では言わないようにとよく言っているのに」

「ダイチよ……あまり妾の前で他の女性に見とれているとは感心せぬな」


 フルートが顰め面で言ってくる。


「あ、いや、別に……」


 ダイチは慌ててごまかす。


「中々面白い殿方ですね」


 アリアンは言うと、恥ずかしさが込み上げてくる。


「それではごゆっくりしてくださいませ」


 それだけやり取りを見て満足したのか、アリアンはスタスタと厨房へ向かう。

 しかし、ウエイトレスの制服が似合う人だ、とダイチは思う。


「それでは私も」


 そう言ってミリアもアリアンについていこうとする。


「試食は程々にな」


 と一応ダイチは釘を刺しておく。


「はい」


 ミリアは快く答えたが、彼女の言う「程々」というのはどの程度なのか、深く考えない方がいいだろう。





浪速のよっしー「チャミーも木星で大変だったそうやな」

チャミー「そうなんよ、テロに巻き込まれるで大変やったんやわ」

ヘクトン「首都の惑星連合会議に合わせて首都占拠を狙ってのことだろうな。テロリスト集団テミストは皇抹殺を狙ったことはないが、何か別の目的があるのだろうよ」

ラッカセイ「ヘクトンさん、相変わらずお話が長いですね」

ロイヤルカード「いつものことだろう」

チャミー「いやはや、帰りは木星政府の計らいでファーストクラスのシャトルでウハウハやったわ」

ほおわ「何ぃ―そんな羨ましい待遇受けていたのかぁぁぁッ!?」

浪速のよっしー「どんな飯を食ったのか?」

チャミー「木星名物の赤斑スープや生クリーム仕立てのカフェモカが絶品やったわ」

ヘクトン「うむ、あれはいいものだ」

チャミー「しかし、今回の事件で天塩にかけて作り上げたスーパーロボット・フォルティスがスクラップになってもうたわ」

ラッカセイ「それはお気の毒に」

チャミー「また新しいのを作ってみせるわ。スクラップなら山のようにあるからな」

ロイヤルカード「その意気だ。さすがは我が盟友だ」

ヘクトン「出来ればそのスクラップをわけてほしいところなんだが、火星と天王星は遠いからな」

チャミー「天王星か……」



 そこまでタイピングしてイクミは手を止める。

「確かに遠いな、どうやっていったものか」

 イクミはさらにタイピングする


チャミー「すぐ天王星行きたいんやけど、なんかいい方法ない?」


 期待しないで投げかけてみた。

 返事はすぐ来た。


ラッカセイ「心当たりないですね。地道に稼いでいくしか私にはできませんから」

浪速のよっしー「懸賞であてれば一発やろ! 宝くじも夢があってええのう!」

ヘクトン「賞金首をとったらいいんじゃないか。ちょうど火星に土星の流れ者がやってきているらしいし」


「……?」

 イクミはその文字に興味を持って、別のディスプレイで犯罪者のリストを見てみる。


「イクミ! ちょっと腕の調子見てほしいんだけど」

「またかいな?」


 エリスは手を差し出してきた。

 イクミは工具を取り出して、エリスの手を見る。


「また無茶な使い方しはったな。前のパーツ、揃えるのえらい苦労したんやで」

「それで前と感覚が違うのね」


 エリスは義手の指の先を動かして感触を確かめる。


「すぐいかれるんじゃない」

「繊細な動きが出来る上に頑丈なパーツほど高価なんや。今のウチらの財布じゃ無理やな」

「うぅ……もっとお金があったら……」


 エリスは悔しそうに言う。


「急ごしらえならこんなもんやろな」


 イクミは工具を使ってエリスの手をパキパキいじる。


「ツイン・スパークどころヒートアップですら耐えきれるか保証しかねるけどな」

「うーん……しばらくはこれで我慢するか」


 エリスは拳を握りしめる。

 そしてさっそく立ち上がって、拳を繰り出す。


バシ! バシ!


 サンドバックを叩きつける。


「うるさいな、寝ていられないじゃないの」

 布団をかぶっていたマイナは文句を言う。


「居候のクセして何偉そうに」

「だって、帰りのシャトル代がなかったから!」


 あの時、木星での騒動の際、エリスがふんじばって無理矢理、脱出船の操縦をさせたドサクサで火星までついてきてしまった。それで家に帰ってくるなり、エリスが「水星に帰らないの?」ときいたところ、お金が無いから帰れないと漏らした。

 他に行くアテがないものだから、と仕方ない家で寝床を用意してやっているのだが、態度はでかくて気に入らない。


「マイナ……ちょっとこっちに来なさい」

「サンドバックの代役はお断りだよ。とっくに経験済みなんだからね」


 マイナはまだ木星でエリスにサンドバックにされたことを根に持っているのだろう。しかも八つ当たりのように殴られたのだから、相当根が深い。


「ち、読まれてたか。しょうがない、ここはダイチに――って、あいつは出かけていた」

「いやあ、ダイチはんはいいタイミングで出かけはったな~」


 イクミは冗談交じりに言う。


「ただいま」


 そこへダイチが扉を開けて入ってくる。


「…………………」


 これにはイクミも苦笑いするしか無かった。


「そして、最高に悪いタイミングで帰ってきはったな」

「ダイチ~」


 エリスは妙に明るい声でダイチを手招きする。


「ん、なんだ?」


 ダイチは何の疑いもなく、エリスに近づく。


「あなたに頼みたいことがあるの」

「頼みたいこと、なんだよ? 俺に出来ることなら何でもいっていいぜ」


 あちゃあ~、とイクミは額に手を叩く。


「じゃあ、サンドバッ……スパーしましょう」

「は?」

「だから、スパーよ」

「お前、今とんでもない本音を言いかけただろ?」

「そんなことないわよ。結果的にそうなるだけで」

「あのな……俺は痛いのは嫌なんだよ」

「何もタダで、とは言ってないわよ」

「何かくれるのか?」

「お小遣い、足りなくなってるでしょ」

「う……!」


 ダイチにとっては耳の痛い話であった。

 仕事のないダイチは、エリス達の収入の一部をお小遣いとして受け取っている。

 正直情けない話なのだが、貰えるというのならありがたく貰いたいところだ。


「いわゆる、ファイトマネーってやつよ」

「ああ、しょうがねえな」


 ダイチはため息をつく。


「じゃあ、承諾ということで」

「さっさと終わらせるぞ」


 ダイチとエリスは向かい合う。

 するといきなり、エリスは拳を繰り出す。


「おうわッ!?」


 ダイチはとっさにそれをかわす。


「ふふん、今のは小手調べよ」

「ああ、そういうことか」


 ダイチは納得する。


「俺は女には手を出さない主義なんだが」

「だったら、一方的に殴られればいいでしょ」

「いや、女に殴られる趣味もないぜ」


 そんな言葉をかわしているうちに、エリスから飛んでくるパンチやキックをなんとかかわす。


「く……!」

「やるじゃない!」


 速い。

 流れるようにパンチやキックが途切れることなく繰り出してくる。

 エヴォリシオンだとか、能力だとか、そんなの関係なくエリスは強い。反撃の一つでもして動きを止めたいのだが、それが出来ない。かわすだけで精一杯だ。

 しかし、それも長くは保たない。

 いずれ、エリスはダイチを捉えるだろう。一発当たったら、もう、かわしきれない。嵐のような連打でサンドバックになるのが目に見えている。


「こいつッ!」

 ダイチは意を決してパンチを防御する。その隙に足払いをかけてやる。


「あ――」

 エリスは思わぬ反撃に文字通り足元をすくわれる形になった。


(そのまま倒れてくれよ)


 しかし、エリスは立て直す。

 強靭な足腰だ。とても女の子とは到底思えない。


――そもそも、帰ってくるなり、いきなりスパーを持ちかけてくるような奴を女の子として見るのは無理な話であった。


バシィッ!


 エリスの反撃のパンチが綺麗に決まった。


「ゴフッ!?」


 一発、二発、三発……と、思ったとおり、一発決まった途端嵐のような連打にさらされた。


「おお、これがサンドバックというやつか」

「いや、フルートはん。それは比喩やからな。本当のサンドバックはあっち」


 一応イクミはフォローを入れたが、擁護するのが難しいぐらい、ダイチはサンドバックと化していた。


ガタン!


「ろ、ロープ、だ……」


 ダイチはぶっ倒れてそう言い残した。

 後にダイチはそれを言うべき種目ではないのでは、と思った。


「いや~、いいストレス解消になるわね」

「エリス、目的変わってるで」


 イクミは呆れてそう言った。


「まあ、これぐらい殴れたら普通の生活には不自由しないわね」

「いや、その確かめ方はおかしい」

「ダイチ~いきてる~?」

 マイナはダイチをつんつんと突く。


「あ、ああ……」

「むう、エリスの奴め。妾の夫をこんなにまでしおって……! 仇は必ず妾がとるぞ」

「いや、お前がやるとシャレにならないからやめろ」

「なんと、あのような暴力女を許すと申すか? さすがじゃな、ダイチ。神のごとき寛大さじゃ」


 フルートは感心して上機嫌になる。


「でも、エリスの腕が治ってよかったな」

「治ってなんかいないわよ。これも応急処置よ、前の義手に比べたら無茶がきかないし」

「は、はは……あれで無茶していなかったと……」


 ダイチは苦笑した。

 しかし、改めて考えるとそれにも納得がいく。何故ならエリスにはヒートアップという身体の反応速度を発熱とともに高める能力がある。この高まった能力によってかかる義手の負担は半端じゃない。


(前の義手も、それに耐えきれずにぶっ飛んだんだよな……)


 テロリストの基地から脱出して、木星政府に保護されてからしばらくエリスは両手の無い生活で不自由していた。こっちに帰ってようやく新しい義手を取り付けた。

 おかげで溜まりに溜まったストレスの発散口にされることになった。


(まあ、木星とかで助けられたしな……)


 ドジを踏んで捕まったと言うのに、テロリストの手から助け出してくれた。

 その恩をこれで返したというのなら、不思議と腹が立たなかった。というよりも、女の子相手に手も足も出ずにやられた自分の不甲斐なさに腹が立った。


(強くなりたいな)


 それは男としての本能かもしれない。

 目の前にいるエリスよりも、とまではいかないが、少なくとも肩を並べるくらいはなりたい。


「……時間かかりそうだな」

 ダイチはため息を漏らす。


「おお、これや!」

 ふと我に返るとイクミがカタンとタイプしていた。


「これってなんだ?」

「手っ取り早くお金を稼ぐ方法や」

「おお!」


 ダイチは興味が沸いて、イクミの方へ走る。

 ディスプレイにはごっつい男の顔写真が映っている。


「誰だこれ?」

「エンコーの相手」

「なぁにぃッ!?」

「はあッ!?」


 イクミの返事にダイチはともかくエリスまでも驚く。


「ちょっと、イクミ! 何トチ狂ったこと言ってんのよ!?」

「そうだぜ! そういう金稼ぎはよくねえぞ!」

「冗談やて」


 イクミはあっさりと言う。


「ほんの冗談のつもりで言うたのに、本気にすることはないやろ。ほんま、あんたら息ぴったりやな」

「じょ、冗談……?」


 エリスは呆気にとられた。


「だいたい、ウチに色気なんて皆無なのはエリスもわかってはるやろ」

「そうだな……」

「ダイチはん、そこは嘘でも「そんなことないでー」とか言うとこやろ」

「そうなのか?」

「まあ、本当のことを言うのも優しさとも言うしね」


 エリスがさらりと言うと、イクミとダイチは呆気にとられる。


「エリスがまっとうなこと言うてる……」

「ああ、俺もビックリだ」

「なんでそうなるのよッ!?」


 エリスは拳をブンブン振る。


「んで、結局はこいつなんなんだよ」


 ダイチは話題を戻す。

 見れば見るほどゴツい顔立ちで、その険しい目つきは人を殺したことがあるかのように鋭かった。きっと街中であったらビビって道を譲るだろう。


「賞金首や」

「ああ、なるほど」


 ダイチは納得した。写真の下に映っている数字がなんだかそんな気がした。


「え、じゃあ、こいつ捕まえたらこんだけ貰えるわけ!?」


 エリスは目を輝かせる。


「せや、賞金首やから当然やろ」

「一千万ガラって凄い大金じゃない!」


 ガラというのは火星の通貨単位なんだが、今いちダイチは要領をつかめない。

 前にエリスに「円にしたらいくらぐらいなんだ?」って訊いたら「円って何?」って返されたことがある。


(アメリカドルとかも知らないよな、ここじゃ……)


 改めて、ここが火星というか異世界なんだということを思い知らされる。

 ちなみに、さっきダイチが店で飲んだコーヒー代が200ガラらしい。


「そんなに大金なのか?」

「あったりまえよ! これだけあったら天王星にもひとっ飛びよ!」

「へえ……だったら、本当に手っ取り早いな」


 賞金首でこんな厳つい男を倒せるのか少し不安を覚えるが、エリスなら大丈夫だろう。

 ちょうどいいストレス解消のはけ口になってくれればいいし、それで金を稼げるのなら言うことはない。


「しかも、これな~さっきはいったばかりの情報なんやけどな~」

「なんだよ」

「こいつ、この街に潜伏してるみたいなんやで」




「この男を見ませんでしたか?」

 ダイチは写真の男を雑貨屋の店主に見せた。


「いいや、見かけないな」

 店主のその答えに落胆して、店を後にする。


「ここも外れだ」

「そう簡単にいきませんよ、相手は賞金首ですし」

「ああ、こういうのは地道に行くもんだけどな……そうとはわかっていても、ここまで空振りが続くとな」


 ダイチは思わずぼやいてしまう。

 写真の賞金首……デイエス・グラフラーは天王星で六人もの人間を殺して逃亡し続けたが、火星の街で捕まった。なんでもある男にケンカをふっかけて負けて打ちのめされたところを捕まったのだとか。

 ただ、その後が問題だ。

 この男は天王星に護送する手はずになっていたのだが、護送車を爆破して逃げ出したらしい。以来行方知れずになっており、殺人犯を逃したということで天王星政府から非難されている。

 形振り構っていられなくなった火星政府はこの殺人犯を捕まえるために巨額の懸賞金を割り当てたのだとか。

 そのあたりはイクミが情報収集してくれて、興奮気味に話してくれた。


(しかし、天王星にいくために天王星人を捕まえるのか……)


 なんだか、こう因縁的なものを感じずにはいられなかった。


プープー


 携帯端末から発信が入ってくる。

 目の前に浮かび上がってきたディスプレイにはエリスの文字がはいっている。

 イクミが言うには操作の基本は足から、ということで、ダイチとミリア、エリスとフルートの二人一組に分かれて地道に情報収集することにした。


「あいつ、なんか手がかりでも掴んだのか?」


 そんな気はしないけど、一応出てみるか。

『そっちの調子はどう?』

「いや、手当たり次第にあたってるけど、ダメだ」

『まあ、そんなことだと思ったわ』


 バカにされてみたいで少しイラッとする。


「そういうお前はなんか見つけたのか?」


 そう訊き返すとエリスはニヤリと得意気に笑う。


『当然よ』

「本当かッ!?」

『そんなに驚くことないじゃない。私だって情報収集ぐらいできるのよ』

「そ、そんな馬鹿な……」

『そこまで言われると心外ね』

「失礼ながら、私もダイチさんとまったくもって同意見ですわよ」

『ミリア……あんたまで……!』

「汚名を返上したいのであれば、仕入れた情報を教えてください」

『まったく、しょうがないわね』


 エリスは頭をかく。


『ガラジさんに聞いてきたのよ』


「ああ、あの自称この街の長さんですね」

「そんな奴がいるのか」


 ダイチにとっては初耳であった。


『あくまで自称なんだけどね。まあ、でも一応情報通らしいことは言ってたわ。

――とりあえず合流しましょうか』

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