二人のデート
食堂が爆発したことによって上之宮学園は、一週間の臨時休校となった。代わりにインターネットによる、ビデオ通話を使った授業を行うことになる。
その日の授業が終わった響は、自室の椅子を深く倒すとそのまま背中を預ける。普段教室での授業に慣れているせいか、自室での授業は疲れたのだ。
疲れた響がウトウトし始めてまぶたを閉じようとすると、スマートフォンからメールの通知音が鳴りすぐに起き上がる。
画面を見ると担任から、来週の学校再開についての内容が書かれたメールであった。一瞥した響はそのままスマートフォンを机に置くと、もう一度まぶたを閉じるのだった。
「しかし大変だよな、学校の方も……」
臨時休校となった理由は対外的にはガス爆発となっているため、上之宮学園は臨時休校の翌日から、業者による安全点検が行われることになった。
真相を知っているのは響のようなイヴィルダーに関係している人間だけであろう、もしガス爆発でないと怪しんでいる者がいれば、記憶操作されて齟齬が出ないようにすると知恵は言っていたのを響は聞いた。
そうやって目を閉じていると響は、今日の晩ごはんをどうしようかと思いつく。すぐに起き上がると、琴乃に相談するためにリビングに行くのだった。
「琴乃~今日の晩ごはんどうする?」
返事は待てども返ってこないために響はリビングを覗くが、リビングには琴乃の姿はなく誰一人居なかった。
「あれ、琴乃出かけているのか?」
響は喉が乾いたために水を飲むためにリビングを通り抜けようとすると、机にメモ書きが置いてあることに気づく。メモ書きには、今日友達と遊んできます、晩は外で食べてきます。と書かれてあった。
「まじか……」
二人分の料理を作ろうと思った響は梃子を外されたことで意気消沈となり、晩ごはんを作る気力が無くなってしまった。すると響の心に今日は外食するか……という悪魔の囁きが聞こえてくるのだ。
悪魔の囁きに耳を貸しかけた響であったが、囁きを振り払おうとした瞬間に柔らかい感触が腕に感じる。
ふと響が視線を向けると、そこには腰にまで届きそうな金髪をなびかせ、バスト九十を超える豊満な胸を持った魔神レライエがそこに居た。
レライエはぴっちりとしたへそが見えるノースリーブの服と、少し屈むだけでパンツが見えそうなぐらい短いミニスカートを着ていて、密着している響を興奮させるものだった。
「響、今日は外に行くんだろ? なら私も一緒に連れて行ってくれないか?」
「え!?」
「だめか?」
レライエは響の腕に抱きつくと、目を潤ませながら上目遣いをして話しかけてくる。響はレライエの上目遣いを一瞬頷きかけてしまうが、すぐに思い止まった。
追い打ちをかけるようにレライエは、響の腕を胸に強く押し当てる。柔らかい感触が響の腕に包まれると、響の心は遂に陥落するのだった。
「俺の指示に従うなら……いいぞ……」
「本当か!? ありがとう響!」
響から許可を取り付けたレライエは、嬉しそうな表情をすると、そのまま響に抱きついてしまう。響の頬にレライエの柔らかなバストが、潰れる勢いで触れ合ってしまう。
「じゃあ俺着替えてくるから……ちょっとリビングで待っててくれ」
「ああ、心待ちにしているぞ!」
響はすぐさまレライエに背中を向けると、心拍数が早くなった心臓を手で抑えながら自室に戻っていく。
さすがに待たせるのは悪いと思った響は、急いで無難なYシャツとスラックスに着替えるとリビングに戻る。
リビングに到着した響が見たのは、椅子に座り机に突っ伏して、足をぶらぶらさせているレライエの姿であった。
(これだけ見れば、ただの美人なんだよな……)
机に挟まれて潰れたレライエのバストをチラ見しつつも、響はそんなことを思うのだった。
そうしてレライエの元に近づいた響はまるで手を取るように腕を伸ばして、優しくレライエを立ち上がらせる。
「ふふ、ジェントルマンのつもりか? 私をエスコートするにはまだまだ青いぞ」
「せめて全力でお相手させてもらいますよ、レディ」
「ふふふ、なんだ響その気取った言い方は」
「そっちこそ、お嬢様みたいなキャラかよ」
二人共なれないことを言ったのは自覚していたのか、互いに見つめ合うと少しずつ笑い始め、しだいに大笑いしてしまうのだった。
一笑した響とレライエは二人で手を繋ぎながら家を出ると、まるでデートをする男女のようにショピングセンターに向かって歩みを進めるのだった。
ショッピングセンターに着いた響達は、行く宛もなくぶらりと歩き回っていた。そんな二人であったが、周囲の人々からチラチラと視線を向けられる。
「さて、どうするレライエ?」
「響? なんで周りの人間はこっちに視線を向けてるの?」
「あーそれなぁ、言っていいのか?」
響はすぐに視線を向けられている理由がレライエであることに気づく。見た目は金髪のコーカソイドで視線を引きつける容姿、そして男ならまず目が行く豊満な胸部と、視線を向けられる要素をレライエは兼ね備えていた。
「それはだな……」
「んーなんだ? 言えないことか? やましいことなのかー?」
「レライエが美人だからだよ!」
「なんだー言えるじゃないか」
響は口ごもるがレライエの挑発的な発言を聞いて、大声で叫んでしまう。それを聞いたレライエはニッコリと笑うと、周囲に見せつけるように響の腕を胸に当てて抱きつくのだった。
腕に感じる柔らかな感触に響は顔を赤くして離れようとするが、レライエの力は強く簡単に離れることは出来なかった。
腕を組みながら二人はショッピングセンターの中を歩いて行くが、その道中レライエはある場所で足を止める。その場所はゲームセンターであった。
ショッピングセンター内の施設であっても周辺のゲームセンターより大きく様々なゲームが稼働しており、学生も放課後に遊ぶ者は多かった。
「行くか? レライエ」
「いいのか!? 響!」
響の提案を聞いたレライエは目をキラキラと輝かせると、響の手を取りゲームセンターへと歩いていくのだった。
レライエはゲームセンター内に設置されている機器を、興味深そうに見渡しながら歩みを進めていく。そして彼女は多人数プレイのできるシューティングゲーム機の前で立ち止まる。
「響! 銃のあるこれは何だ!」
「ん、これは銃で敵を倒すゲームだな」
「ふーむ、やってみよう響!」
興奮した様子を隠しきれないレライエを見て、響は迷わず小銭を機械に投入する。そんな中レライエはコントローラーである銃を手に取ると、チュートリアルを一人で始めていた。
響はレライエが楽しんでいる姿を見ながらも、苦戦している時には手を出して助けるのだった。
そのまま二人はゲームをプレイしていく。レライエはまるで物語の主役のように派手にエネミーを倒していき、響はレライエと連携するように別のエネミーを倒していく。そんな二人の息のあった連携プレイを見て、周囲の客達が集まっていきギャラリーが増えていく。
二人はゲームを一度もコンティニューすること無く順調に進めていき、遂に最終ステージに到着するのだった。
「響、これで最後か?」
「ああ、これをクリアすればゲームクリアだ!」
「なら見せてやろう、私とお前のコンビが最高であることを!」
二人は見事なコンビネーションで難なくステージを進めていくと、ラスボスへと到達するのであった。しかしラスボスの強さは先程のエネミーとは比べ物にならない強さで二人は苦戦する。
二人の体力ケージは徐々に削られていき、周囲のギャラリーも負けるかと思ったが、レライエの撃った直後にラスボスは倒れてゲームはクリアとなった。
「やったな響!」
レライエはコントローラーを置くと、嬉しそうに響に抱きつくのだった。たわわな胸が響の腕に当たって、形が潰れてしまう。それを見たギャラリーは囃し立てるように数々の口笛を吹く。
口笛を聞いたレライエは恥ずかしそうに頬を赤めると、すぐさま響との距離を取るのだった。
そのままレライエは響の腕を掴むと、その場を後にするように走り出して行く。そのまま走り抜けていった二人は、ショッピングセンター内の映画館がある場所にたどり着いた。
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