第5話 夜会でのアルフォード

「あら。アルフォードったら。男爵令嬢と別れて、こちらにいらっしゃるようよ」

 アリーヌが、何だか少し嫌そうな感じでそう言っている。

 そう言われて、その方角を見ていると確かにアルフォードがこちらに向かってやって来ていた。

 それよりもソフィアが、王族がいる場所に座っている王太子に向かって行っているのが見えるけど……。


「あの。エルミーヌ様?」

 この話は、ハーレムルートだから、ここの三人は皆婚約破棄をされるはずで……。

「わたくしのことは良いのよ。どうせあの女性ひとでなくとも側妃や公妾は出来てしまうのだから。まぁ、あの女性ひとが正妻になってもわたくしはかまわないのですけど」

 少しうんざりした感じでそう言っている。そんなものなのかな? って、正妻? 王妃では無く?



 こちらに来たアルフォードは、エルミーヌとアリーヌに気付き礼を執る。

 挨拶の口上を述べようとしたら、お二方ともそっぽを向いてしまった。

 なので仕方なくという感じで、私の方に向いて言う。

「どうしてアイリーンがここにいる? それにそのドレス。今さらそんなドレスを着て、俺の気を引こうというのか」

 怒っているというより、馬鹿にしたような口調に聞こえる。


 なんだかちょっとムカつく。ドレスが何だって言うのよ。

「わたくしは、正式に招待されているからここにいるのですわ。兄にエスコートしてもらいましたの」

 ニッコリ笑ってそういうと、アルフォードの顔が引きつった。

「俺のエスコート無しには、夜会には来れないだろう」

 

 そのセリフに見かねたようにエルミーヌが口を開く。

「アルフォードは、余程アイリーン様との婚約を無かったことにされたいのですね。マクレガー伯爵がやっとの思いで、婚約までこぎつけたのに……」

 最後の方は、呆れたような口調になっていた。


「あら、あの男爵令嬢。近衛騎士に追い払われているみたい」

 アリーヌが実況を始めた。いや、男爵令嬢って、そんなに名前呼びしたくないのかしら。

「あっ。殿下たちが止めに入ろうとして、大臣たちから止められてるわ。揉めているわねぇ。みっともなく」

 思わず私たちも、アリーヌが見ている方に目をやる。

 夜会会場が、騒然となっていた。


 アルフォードが騒ぎの方へ向かおうとすると、エルミーヌがその後ろ姿に声をかけた。

「おやめなさい。アイリーンのおまけで招待されている貴方が行ってどうしようというの」

 思わずと言った感じで、アルフォードが振り向いた。

「アルフォード。貴方、ずいぶん思い違いをされているようだけど。貴方がなの。でないと、何代も功績を挙げていない伯爵家の人間が呼ばれるはずも無いでしょう? 王室の皆様、総出の夜会に」

 ここまでハッキリ言わないとわからないおバカさんなの? とばかりにエルミーヌはわらって言う。

 まぁ、向こうの騒ぎでこちらの会話には注目がいってないでしょうけど。


 でも、そうだったのね。

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