第22話、プリンで王子が釣れた
「今日はお菓子を持ってきましたの」
ここは、旧ミシティー城の一室。十王の一人、闇のモウジュさんの私室になります。
「ほう、迷い人たるお主のことだ。
元の世界の菓子であろう」
「ええ、どうぞお召し上がりください」
「ほお、これはなかなか」
「30作ってきましたから、皆さんでどうぞ」
「女子が喜びそうじゃな。
それと王子あたりにも食わせてやろう」
モウジュさんは女性を呼んで、王子と皆で食べるよう指示しています。
「このマリアからの差し入れじゃ」
「「「ありがとうございます」」」
少しして、ドアが激しく叩かれます。
「モウジュ、入るぞ」
「王子、血相変えてどうされました」
「あの菓子はなんだ。どうしてあんな菓子が作れるんだ」
「こちらのマリアは迷い人でしてな、マリアの世界の菓子だそうな」
「マリア・シークレットと申します」
「領主で第三王子のダランだ。
これはお前の世界の菓子なのか」
「はい」
「どうやって作った」
「それは秘密ですわ。
簡単に手の内を明かすほど愚かではありませんから」
「うぬ…」
「王子よ、わしは菓子よりも器のほうが気になりましたが…」
「器だと?」
「これほど軽い金属を、わしは知らん」
「軽い…金属だと…」
「武器は、ある程度の重量が必要じゃが、防具にすれば兵士の負担も軽くなると思いませんか」
「さすがわモウジュ様。
盾と胸当てを作ってきました。
どうぞ」
「おお、ここまで軽いのか!」
「ジュラルミンという金属で、鉄のように錆びません。
海水には弱いですけど、鉄と同じくらい固いですから、私の世界でも盾はこれを使っています」
「このサイズでも片手で軽々と持てるとはな」
「こ、これを父上に進呈すれば…」
「王子よ、これ一つでは…」
「マリアとやら、これを量産するのだ。
製法を教えろ」
「この世界の職人には作れません。
特殊な製法が必要ですから」
「ぐぬぬ…
ならば、お前が作れ」
「王子よ、マリアはわしの客じゃ」
「…だが、これほどの物を…」
「マリアよ、何かこちらで提供できるものがあれば聞こうじゃないか」
「そうですね。ミシティーの残党狩りをやめるというのは如何でしょう」
「なに?お前はミシティーの者なのか!」
「いえ、単に旅の途中で知り合っただけですよ。
私は迷い人ですから」
「ぐぬぬ…
だが、これを50進呈できれば、父の俺に対する評価も…」
「どうなさいますか、王子」
「うぬ…、だがこちらにも条件がある。
我が国に恭順するという約定をもってこい」
「王女の約定書でいいですか」
「やはり、王女は生きているのか…」
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