第2話 誰でちか
「ここは、中世のお城みたいな所なんだな。外観は分からないが」
「ご主人様が跡取りなのでちよ」
メメが頬を膨らませている。
ああ、ドヤ顔なのか。
「床では尻が冷たいよな。座れる所があるといいが」
俺は、頭を掻きつつ、冷えた臀部を擦った。
すると、メメが寄って来る。
「ドリちゃま、レディが尻だなんて、めっ! 分かるでちか」
メメが人差し指をお口の前でバッテンにして叱った。
これは、パターン化しそうで怖い。
「ご主人様が寒くなっているのでちたら、ミーが丸く座ってあたためるのでちが」
「いやいやいやいや」
俺の全否定にメメがしょげた。
「拙が食堂をご案内いたそう」
おお!
そこは椅子もテーブルもありそうだ。
二人に案内されて随分なダンジョンを歩むと、真っ白なテーブルクロスがピンと張った所に着いた。
程なくして、イシスさんが、ティーセットを運んで来た。
「モミティーを召し上がると落ち着き申す」
何だろう。
断るのは、冥利が悪いな。
「ありがとう。いただくよ」
口にそっと含んだ。
「おお。まろやかで、野性味の強いハーブティーのようだ」
イシスは、ただ横で微笑んでいた。
メメが隣に座る。
「……誰でちか。ドリちゃまそっくりでちよ」
「拙は、ドリーさんはお淑やかでご主人様にも一番可愛がられていたと覚えておるでな。このお方は、ご自身を俺と呼びなさる所からも違い申す」
「待て待て待てよ。先ずは、仕切り直しだ。ここは何処だ」
「イスミン国のセイエ湖畔でおわす。城の名は、シュバイツァー」
「そうなのでち。お魚には困らないでーち」
「メメさんは食いしん坊だのう」
ぐきゅるう。
俺のお腹が鳴った。
恥ずかしい。
「ドリーさん似の貴方よ、ご一緒に如何でござるか。これからお昼にいたす」
「ミーは、イシスちゃまのご飯は全部大好きでち」
「ああ、俺も皿まで食べたい程お腹が空いているよ」
「ドリーさん似の貴方は、丸三日眠っていたことが分かり申すか」
「ええええ! 道理でもう眠くない」
「ミーが膝枕するでち。おねむのときは、遠慮は要らないでちよ」
「だから、寝すぎたんだってば」
「あらあら。仲良くしてくださいましよ」
「ドリちゃまが強く言った……。メソメソ。今日のスープは塩気を抜いて置いて欲しいでち」
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